Vein.fm(ヴェイン・fm)
『This World Is Going To Ruin You (ディス・ワールド・イズ・ゴーイング・トゥ・ルーイン・ユー)』

グラインドコアからインタストリアル、マスコア、ニューメタルにメタルコアにホラーサウンド・トラックをカオティックにぶち込んだ現在ヘヴィネスの、進化の最前線にいるバンドの2作目。

Vein(ヴェイン)からVein.fm(ヴェイン・fm)にバンド名が変更され、発表された今作。前作『Errorzone(エラーゾーン)』は、現在ヘヴィネスの最前線にいるサウンドを提示し、ビルボードのハードロック部門のチャートで21位にランクインをし、世間的に評価の高い作品だった。今作も前作同様、オリジナルティーのあるいい作品に仕上がっている。

今作も目まぐるしく景色が入れ替わる狂った精神世界のような、カオティックなサウンドフォーマットに変わりはない。だが前作と比べるとアルバム全体がノイジーになり、病んだ精神世界から絶望に満ちた世界に変化を遂げている。

『This World Is Going To Ruin You (ディス・ワールド・イズ・ゴーイング・トゥ・ルーイン・ユー)』というアルバム・タイトルに通り、今作のテーマは破滅に向かっている世界。サウンドコンセプトにあるのは葬式。今作では、目まぐるしくカオティックに変わる激しいパートの部分に、ダウナーな穏やかで不気味な静けさが加わり、さらにカオティックな作品に仕上がっている。

絶望を苦しみ悶え哭くようなボーカルの絶叫と、狂ったように目まぐるしく変わるギターフレーズ、神経が切れるような激しさから、突如厳かで静けさに満ちた世界に変わる展開。新たに加わった静の要素とは、厳かな葬式の静けさ。絶望的なトーンの低いピアノに、救われることをあきらめきった女性ボーカルの声。まるで希望を失い無気力な嘆きの牢獄のような絶望がそこには漂っている。

この作品には、まるでツインピークスのような狂気な世界を感じる。ドラッグ中毒者のようないろいろなものが急激に入れ替わる幻想世界。その希望を失い無気力な絶望には、不気味なほど透明で、魔界のような黒く深遠な美しさがある。

目まぐるしく激しくカオティックで、静かで厳かな美しさ。二律背反する矛盾する要素が、ツインピークスのように入れ替わり、美しさを描くサウンド。前作を踏まえたうえの成長の跡が感じられる。今作もまた素晴らしい作品。