フィラデルフィア出身のハードコア・バンドの5枚のEPとシングルを重ね発表されたデビュー作。Chemical Fix(ケミカル・フィックス)でベーシストとして活動しているWyatt Oberholzer(ワイアット・オバーホルツァー)がボーカルを担当しているバンドで、ここではメロディックなハードコアを展開している。
初期のころはオールド・スクール・ハードコアで中期はファストコアと、作品を重ねるごとにギターの技術力があがり、格段に成長を遂げている。今作では骨太なハードコアにメロディーを合わせたサウンドを展開。ハードコアが前提にあるだけに、エモーショナル・ハードコア・バンドのような、うじうじした要素はなく、パワフルで苛烈な激しさを持っている。
そのサウンドは、American Nightmare(アメリカン・ナイトメア)やComeback Kid(カムバック・キッド)などを彷彿とさせるメロディックなハードコア。スクリームに近く血管が切れそうなほど尋常でないテンションのボーカル、警告音から不穏で妖しいメロディ、骨太なギター、間段なく勢いよく突き抜けていくスピーディーなドラム。すべてが焦燥感に満ち、ダークでシリアスな空気を纏っている。
歌詞は内面に潜んでいる悪魔や、悪夢にうなされる夜、暗闇で叫ぶ怯えた子供、早すぎる死、精神的な虐待など、精神障害者のような内省世界を表現している。まるで解離性同一性障害者や精神異常者やのような妄想世界さがあり、トラウマのような苦しみの感情が漂っている。
ダークでヘヴィーなメロディーを取り入れたハードコア。多重人格者のように目まぐるしく性格が入れ替わるパニックな感情を、見事に表現したバンドなのだ。