Lament(ラメント)
Lament(ラメント)は、1991年から1994年ごろにブルックリンで活動していたハードコア・バンドで、ミドルテンポの重くグルーヴィーなサウンドを特徴としていた。知名度こそ高くはなかったものの、その音楽性には、後年のビートダウン・ハードコアへとつながる要素がすでに先取りされていた。
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Indecision(インディシジョン)
1993年に Bay Ridge(ベイ・リッジ)で結成され、2000年に解散したハードコア・バンド。メタリックなギター、社会的・政治的な歌詞、そしてブルックリン特有のストリート感を併せ持ち、とくにライブでは激烈なパフォーマンスと観客との極端に近い距離感が際立つ“ブルックリン流”のスタイルが特徴である。Tom Sheehan(トム・シーハン)がヴォーカルを務めていた初期はパンク寄りの作風だったが、Artie Phillie(アーティー・フィリー)期にはよりメタリックで重厚な方向へと進化した。
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このバンドを象徴する存在となった理由は、デビュー作『Unorthodox(アノーソドックス)』に収録された「Hallowed Be Thy Name(ハロウド・ビー・ザイ・ネーム)」の一節 “For those I love, I will sacrifice(愛する者のために、私は犠牲になる)” にある。このフレーズは、ギターのJustin Brannan(ジャスティン・ブランナン) が16歳のときに書いたもので、単なる“仲間意識”を超え、倫理的責任・他者への献身・自己犠牲の覚悟を示す言葉として世界中に広まった。自分のためではなく他者のために行動する、仲間・家族・コミュニティを守る、信念を貫くために痛みを受け入れる――ニューヨーク・ハードコアの倫理観を最も端的に表す言葉として、多くのファンがタトゥーに刻み、世界的な広がりを見せた。
最も有名なエピソードとして、爆発事故で両足と片腕を失い、救急ヘリで搬送されていた19歳のアメリカ陸軍歩兵カイル・ホッケンベリーの肋骨に、このフレーズのタトゥーが刻まれていた写真が挙げられる。この写真は軍事新聞のために撮影されたもので、写真家ローラ・ラウフはその功績によりジャーナリスト協会から賞を受賞した。
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2作目『Most Precious Blood(モスト・プレシャス・ブラッド)』では、パンクの荒々しさ、メタルの重厚さ、そしてニューヨーク・ハードコアのストリート感が激しくぶつかり合い、暴力的で荒々しいブルックリン・ハードコアの中でも、宗教的・社会的規範への批判を前面に押し出した鋭い知性を提示した作品となった。
このアルバムは、オールドスクールの精神性とメタリックな攻撃性を両立させ、1990年代のニューヨーク・ハードコアをつなぐ橋渡し的存在として評価されている。その後、Indecision(インディシジョン)を脱退したギタリストの Justin Brannan(ジャスティン・ブランナン)は、Most Precious Blood(モスト・プレシャス・ブラッド)を結成し、さらにそのスタイルを発展させていった。
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Most Precious Blood(モスト・プレシャス・ブラッド)
Most Precious Blood(モスト・プレシャス・ブラッド)は、Indecision(インディシジョン)を脱退したギタリスト、Justin Brannan(ジャスティン・ブランナン)によって結成された。Sick of It All(シック・オブ・イット・オール)、Aphex Twin(エイフェックス・ツイン)、The Sisters of Mercy(シスターズ・オブ・マーシー)、The Obsessed(ジ・オブセスド)といった多様なアーティストから影響を受け、ハードコアにゴスやドゥームメタルの要素を融合させたバンドである。
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Most Precious Blood(モスト・プレシャス・ブラッド)は、ストレートエッジの薬物・アルコール・乱交への反対という姿勢に加え、アニマルライツ(動物の権利)、ベジタリアン/ヴィーガン思想、権力による暴力や宗教的偽善、社会主義、人権、環境保護、個性や人間関係、国家のプロパガンダ、社会的不正、他者のための自己犠牲といった政治・社会・倫理・精神性のテーマを扱っていた。こうした点はIndecision(インディシジョン)と共通している。
しかし、Indecision(インディシジョン)が“社会の外側”に向けた批判を中心にしていたのに対し、Most Precious Blood(モスト・プレシャス・ブラッド)はその思想をさらに掘り下げ、より内省的で哲学的なテーマへと踏み込んでいる。個人の倫理的選択、自己犠牲の意味、精神的な強さと弱さ、罪悪感・後悔・赦し、自らの信念を貫くために伴う痛みなど、“自分の内側”を問い続ける姿勢が彼らの特徴となっている。
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しかし、バンドは説教臭さを強く否定しており、Justin Brannan(ジャスティン・ブランナン)は「私は人を変えようとはしていません。人は望めば変わるものですから……もし私の言葉の中にあなたが真実を感じたり、納得できたりしたなら、それはそれで良いことです。あなたが自分自身の結論に至るきっかけになれたなら、私は嬉しいです」と語っている。その後、Justin Brannan(ジャスティン・ブランナン)は政治の世界へ転身し、現在は民主党のニューヨーク市議会議員として活動している。
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