Orange 9mm(オレンジ9mm)
1994年にニューヨークで結成された Orange 9mm(オレンジ9mm)は、ポスト・ハードコア、オルタナティヴ・メタル、ラップメタルを横断するミクスチャー・バンドだ。中心人物は Chaka Malik(チャカ・マリク)。彼はニューヨーク・ハードコアの重要バンド Burn(バーン)のボーカルとして知られ、その流れを受けて誕生したのが Orange 9mm(オレンジ9mm)である。
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彼らの音楽性は、ニューヨーク・ハードコアの攻撃性に、1990年代オルタナティヴ・メタルやヒップホップのミクスチャー感覚を融合させた独自のスタイルが特徴だ。1990年代のニューヨーク・ハードコア・シーンに直接属していたわけではなく、ジャンルとしては別の文脈で語られることが多い。しかし、その精神性やルーツには確かにニューヨーク・ハードコアの血が流れている。
Chaka Malik(チャカ・マリク)のラップとスクリームを行き来するボーカル、ヘヴィでメタリックなギターリフ、ハードコアの勢いとヒップホップのリズム感、そしてポスト・ハードコア的な不穏さと緊張感。ストリートのリアルさを宿しながらも、より広い音楽性を持つミクスチャー・サウンドを確立した。
Orange 9mm(オレンジ9mm)は、Downset(ダウンセット)や Rage Against The Machine(レイジ・アゲインスト・ザ・マシーン)といった1990年代のミクスチャー/オルタナ勢と並び語られる存在であり、ニューヨークらしいストリート感を武器に、ニューヨーク・ハードコアの外側を切り開いた独自のバンドと言えるだろう。
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Prong(プロング)
Prong(プロング)は、ニューヨーク出身のクロスオーバー/インダストリアル・グルーヴメタル・バンドである。ニューヨーク・ハードコアと直接的な関係はないものの、1990年代のニューヨークにおいて重要な存在であり、ここで紹介しておきたい。
バンドは1986年、Tommy Victor(トミー・ヴィクター)によってニューヨークで結成された。ハードコア、スラッシュ・メタル、インダストリアル、グルーヴメタルといった要素を独自に融合したサウンドは、当時のヘヴィ・ミュージック界に新しい潮流をもたらし、1990年代以降のメタルシーンに大きな影響を与えた。
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とくに1994年の4作目『Cleansing(クレンジング)』は、グルーヴメタルとインダストリアルの融合が完成した代表作であり、バンドの知名度を決定づけた作品である。商業的にも成功し、Prong(プロング)の唯一無二の個性を確立したアルバムとして評価されている。
Killing Joke(キリング・ジョーク)の工業的な反復性に、ニューヨークらしい硬質な姿勢を加え、90年代的にアップデートした“進化版”ともいえるバンドだ。
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Helmet (ヘルメット)
Helmet(ヘルメット)は、1989年にニューヨークで結成されたオルタナティヴ・メタル・バンドである。ニューヨーク・ハードコアとは直接的な関係はないものの、1990年代のニューヨークのシーンを語るうえで欠かせない存在であり、ここで紹介しておきたい。
Helmet(ヘルメット)の特徴は、ダウンチューニングされた重いギターリフ、ミリタリーのように正確なリズム、不協和音や変則コードを多用したギターワーク、そしてメロディよりもリズムと質感を重視した構造的な楽曲にある。Page Hamilton(ページ・ハミルトン)の無機質でクールなボーカルも相まって、そのスタイルは後の Deftones(デフトーンズ)、Korn(コーン)、Tool(トゥール)など多くのバンドに影響を与え、オルタナティヴ・メタルの基礎を築いたバンドとして評価されている。
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1990年のデビュー作『Strap It On(ストラップ・イット・オン)』は、ノイズロック/ポストハードコア寄りの荒々しいサウンドが特徴である。
1992年の2作目『Meantime(みーんタイム)』では低音が強化され、よりメタリックで、8分音符の刻みやタイトなストップ&ゴー、数学的とも評される正確無比なリズムが際立ち、Helmet(ヘルメット)のアイデンティティが確立された作品となった。
1994年の3作目『Betty(ベティ)』は、メタル一辺倒ではなく、ブルース、ファンク、ジャズ的アプローチ、変拍子や奇妙なコードワークを取り入れ、より開放的で実験性と多様性がピークに達した、Helmet(ヘルメット)の中でも最も冒険的な作品である。
1997年の4作目『Aftertaste(アフターテイスト)』は、Betty(ベティ)の実験性を抑え、Meantime(ミーンタイム)のタイトさへ回帰した内容で、よりストレートでロック寄りの仕上がりとなっている。
Helmet(ヘルメット)は、ニューヨークのアンダーグラウンド精神と、構造的で硬質なメタルサウンドを融合させた、1990年代を代表するオルタナティヴ・メタルの基礎を築いたバンドである。ニューヨーク・ハードコアのようなストリートの怒りは持たないが、グルーヴィーで構造的かつ知的でアート寄りのアプローチは、ニューヨーク・ハードコアのバンドたちにも大きな影響を与えた。
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Unsane(アンセイン)
Unsane(アンセイン)は、ニューヨーク・ハードコアの文脈というより、ニューヨークのノイズロック・シーンから登場したバンドである。極端に暴力的で粗削りなノイズロックの切り裂くようなギター、金属的でザラついたディストーション、反復的で不穏なリフ、低音が支配する重いミックス、そして工業的で無機質なリズムが特徴で、ノイズロックとハードコア、メタルを融合した“ノイズメタル”という新たな文脈を切り開いた存在として評価されている。
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1991年のデビュー作『Unsane(アンセイン)』では、地下鉄で首を切断された男性の遺体写真をジャケットに使用し、ほかにも血まみれの車など、機械的な無機物と生命の残虐さが混ざり合う不気味なビジュアルが並ぶ。その世界観は、ニューヨークの工業廃棄物のように荒れ果てた地下街を想起させる強烈な暗黒性を帯びている。
ニューヨーク・ハードコアの攻撃性を、さらにノイズと暴力性で増幅したような音像は、Helmet(ヘルメット)や Prong(プロング)といったNY地下系バンドと共通する硬質さを持つ。メタルの重量感とノイズの破壊力を併せ持つ彼らは、1990年代のニューヨークに漂っていた危険な空気を最も体現したバンドのひとつと言える。
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