アルバムレビュー

NEXØ
『False Flag(フォルス・フラッグ)』

デンマークはコペンハーゲン出身のエクスペリメンタル・ハードコア・バンドの2作目。デビューシングルはRANCID(ランシド)系のスカコアで、デビューアルバムはシンガロングと独特なリズム感のメロディックパンクを展開していた。

今作ではいままでと違うラウドで実験的なパンクを展開している。そのサウンドはノーウェーヴからSKITKIDS(スキットキッズ)のような危機感や攻撃性を煽る扇情的なギター、No Hope For The Kids(ノー・ホープ・フォー・ザ・キッズ)のようなハイスピード。オールドスクールなハードコアに、独特なメロディーをのせたジャンル分け不可能なサウンド。

歌詞は、政府へ怒りや陰謀論者への批判など、政治的な内容が多い。焦燥感と苛立ちに満ちた超スピードのドラムに、怒りに満ちた叫び声のボーカルと、攻撃心を煽りまくる扇情的なギターが、怒りや闘争心を掻き立て、聴く人の気持ちを煽りまくっている。

個人的にはいままで聴いたことがないサウンドを展開しているバンド。思わずすごさに圧倒されてしまう、そんなオリジナルティーにあふれた作品なのだ。

Long Knife(ロング・ナイフ)
『Curb Stomp Earth(カーブ・ストンプ・アース)』

ポートランド出身のハードコア・バンドの3作目。初期のころはポートランドのバンドらしく、Poison Idea(ポイズン・アイデア)からの影響が強いハードコアで、そこにkissや骨太なロック、ザザンロックに日本のハードコアやイギリスのハードコアが入り混じったハードコアを展開していた。

全曲通してバーボンが似合うワイルドさが漂うハードコアだったが、『Sewers of Babylon EP(スーア・オブ・バビロン)』からハードコアにプログレやオルタナ、おーせんてぃんくなロックなど、自由に取り入れたFucked Up(ファックド・アップ)のように、エクスペリメンタルなハードコアを展開していた。

今作も『Sewers of Babylon EP(スーア・オブ・バビロン)』延長にあるサウンドで、実験的なハードコアを展開している。フリージャズのホーンから、超高速ハードコアに、スラッシュメタルのギターソロ、DOORS(ドアーズ)のようなキーボード、BIG BOYS(ビックボーイズ)やM.D.C(ミリオン・デット・コップ)のようなハードコアなど、いろいろな要素をおもちゃ箱のように楽しく詰め込んでいる。

相変わらず、ワイルドさや気合で突っ走っていく熱血といった感情が漂っている。“呪い”や“スカム”“サバイバル“などのホラーな内容の歌詞には、ジョークともとれる笑いの要素が詰まっている。くだらないことに全身全霊を傾け真剣にやるジョークとも取れる熱く気合の入ったサウンド。ヘヴィーで演奏力がものすごく高くテクニカルなサウンドだが、笑顔になるような楽しさがある。

ユーモアがあり個人的には好感が持て、かなり好きなバンドだ。

Jade Dust(ジェイド・ダスト)
『Wild Geese(ワイルド・グース)』

ポートランド出身のエモーショナル・ハードコアバンドの2枚目のEP。Rites of Spring(ライツ・オブ・スプリング)やIgnition(イグニッション)からの影響が強いエモーショナルハードコア。

前作まであったリズム感の歯切れの悪さがブラッシュアップされ、聴きやすい作品に仕上げっている。力強いギターとメロディーギターが絡み合うエモーショナル・ハードコアで、パワフルなサウンドに力がみなぎるメロディーが絡む展開。ここにはエモーショナル・ハードコア特有のウジウジした感情はなく、ガッツに満ちあふれている。

歌詞は“Waking Nightmare(目覚めの悪夢)”では、<目的地は何だろう答えはある>と歌い、“Phoenix(フェニックス)”では<灰の中から不死鳥が現れ飛んでいくだろう>歌っている。そこには、心の底に眠っている挫けない心を喚起するような熱意や、痛み失くして成長なしという、痛みや挫折や失敗を経験しても、前へ進んでいくガッツにあふれている。まさに情熱的なハードコアなのだ。

歌詞の部分ではいままでのエモーショナル・ハードコアとは違い、挫けない心があり熱い。そういった意味では新世代のエモーショナル・ハードコアといえるだろう。