MILLENCOLIN(ミレンコリン)
『S.O.S』

じつに4年ぶりとなる9作目。スウェーデン・メロディック・パンクの第一人者。結成27年になるベテランだが、これまた熱くモチベーションの高い作品と活動を継続している。

 

彼らの個性とは、まるでドラマ『ふぞろいの林檎たち』のように、その年代特有の悩みや苦悩や成長などを、リアルに、赤裸々に、吐露しているところにある。Pennybridge Pioneers(ペニーブリッジ・パイオニアズ)以降、GREEN DAY(グリーンディ)やBLINK 182(ブリンク182)直系のメロディック・パンク・サウンドをベースにしながらも、08年作のMachine 15(マシーン15)ではJIMMY EAT WORLD(ジミー・イート・ワールド)のようなエモロックや、デジタルな要素を加え、True brew(トゥルー・ブリュー)では、悩みから吹っ切れたようなカラッとした明るいメロディックパンク・サウンドを展開していた。

 

今作も前作に引き続きスピーディーなメロディック・パンクを展開。開き直った明るさが魅力だった前作と比べると、今作ではダークで愁いを帯びた曲が増えた。“Nothing(ナッシング)”では、夢や目標を達成したが、そこには何もなかったと歌い、“For Yesterday(フォー・イエスタデー)”では精神的ストレスを抱えている人もいたと歌っている。そこには、新しいことにチャレンジしたとしても、20代のころのように新鮮さはなく、一度経験したものばかりで、何をやっても楽しめない憂鬱さや、上司からのプレッシャーで精神的ストレスを抱えている人など、40代特有の悩みがあるのだ。それがアルバムタイトルに込められた『SOS』の意味なのだろう。

 

どこにでもいそうなシンプルなメロディック・パンクで、一見何の変哲もないサウンドだが、これだけ魂を込められた作品もそうはいない。今作も熱くモチベーションが高く喜怒哀楽にあふれた素晴らしい作品なのだ。

SEED OF PAIN (シード・オブ・ペイン)
『 Champions Of Chaos (チャンピオン・オブ・ケイオス)』


18年9月に発売されたサウスフロリダのクロスオーバー・ハードコア・バンドのデビュー作。ここ数年、FORCED ORDER (フォースオーダー)やPOWER TRIP(パワー・トリップ)などを中心に、クロスオーバー・リバイバルと呼ばれているが、このバンドもこのシーン属している。

 

だがフォースオーダーやパワー・トリップとは、微妙に異なるサウンドを展開している。スラッシュメタルとオールドスクール・ハードコアとの折衷スタイルが多いなか、90年代のハードコアのテイストがふんだんに取り入れている。とくにギターソロからは、BIOHAZARD(バイオハザード)からの影響を感じるし、ヒップホップな歌いまわしが特徴的だ。809年代のスラッシュメタルと、90年代のヒップホップなどのハードコアを折衷したスタイルなのだ。

 

歌詞は怒りや絶望、復讐、痛みなど、内面的でネガティヴな要素が目立つ。サウンドにはけっして怒りや絶望などの要素に満ちていないが、そこにはパワフルな力強さ鋼のような屈強さを美へと昇華したメロディーがあり、ハードコアの魅力がふんだんに詰まっている。クロスオーバー・リバイバル・シーンのなかでもギターソロが特徴で魅力のバンドだ。

Woe (ウォエ)
『A Violent Dread EP (ア・バイオレント・ドレッド EP)』

フィラデルフィアのブラックメタルバンドの2作目のEP。正直、ぼくはこのジャンルに対して、深い知識はない。個人的なブラック・メタルの印象は、バイキングや悪魔のようなコスプレや、サタニズム、アンチ・キリストなどの精神性、音楽性よりも外見的なものを重視しているイメージがある。

 

彼らはブラック・メタルにカテゴライズされているが、そのサウンドからは、Neurosis(ニューロシス)やISIS(アイシス)などのポスト・メタルの影響を感じる。9分近く続くゆったりとしたリズムとノイズ・ギターの壁。そして不安と苛立ちと憤りが入り混じっているボーカルの怒声からは、まるでスロースピードで奈落の底へ落ちていくような深い絶望がある。アルバムジャケットのような世界観だが、その深淵に墜ちていく絶望には、まるでマゾスティックな快感がある。絶望と苦痛。苦痛が快感に変わるエクスタシー。それがこのバンドの魅力ではないだろうか。病んだ精神や現代病をうまく表現している。サタニズムとは違う魅力がある作品なのだ。

Vital Force(ヴァイタル・フォース)
『Fetus Of Mankind(フティス・オブ・マンカインド)』

ロシアはイジェフスクという工業都市を拠点に活動するストレーエッジバンドの2作目のEP。Raid(レイド)やAbnegation(アブネゲーション)など、ハードラインと呼ばれたストレーエッジの強硬派の思想と音楽から多大なる影響を受け、活動を始めたバンド。

 

ハードラインとは反薬物、反アルコール、反中絶、反性差別、反人種差別と、動物の権利などの思想を掲げ、肉や魚、卵や乳製品を含む動物性たんぱく質を摂取しないだけでなく、貧困国から搾取するチョコレートやコーヒーまで口にしない、節制に節制を重ねたストイックな思想なのだ。

 

Vital Force(ヴァイタル・フォース)の場合、環境保全や自然環境を守るといった活動に力を注いでいるバンドだ。歌詞には夕焼けやオーロラなど、大自然の美しさをモチーフにした内容が目立つ。

 

前作はRaid、Abnegationから多大な影響を感じるニュースクール系ハードコアにレベリューション・レコーズ系のスクリーモを加えたサウンドだったが、今作ではグラインドコアからメタル、サイケデリックなどを加え、音楽的は幅が広がった作品に仕上がった。とくにサイケデリックな要素を取り入れたことによって、大自然の美しさや安らぎ、厳しさとトランシーな恍惚感が加わっている。若干音の迫力が欠ける部分があるが、シリアスさは確実にサウンドに反映されている。確実に成長しているし、発売されるであろうフルアルバムが、期待させる作品だ。

Life Force(ライフ・フォース)
『MMXVIII Demo 』

オクラホマ州のノーマンと、テキサス州のダラスを拠点に持つストレーエッジ・バンドのデビューEP。Youth Of Today(ユース・オブ・トゥディ)からの影響が強く、もろにユース・クルーリバイバルといった内容。

 

だが舗装のされていないデコボコな砂利道をブルドーザーのように前へと進んでいく推進力と、熱くてパワフルな怒声ボーカルからは、華奢な印象が強かったユース・オブ・トゥデイと比べると、パワフルでマッチョで熱い。熱血漢なハードコアなのだ。

 

“WE STAND FIRM”(私たちは踏ん張る)や“I do not recognize their authority”( 私は彼らの権威を認めない)などの歌詞からは、政治的にも、ライフスタイルでも、曲がったことが大嫌いな姿勢がうかがえる。頑固なほどまっすぐで、正しいと思ったことを困難でも貫く熱さ。それが彼らの魅力なのだ。

Down To This(ダウン・トゥ・ディス)
The First Ten Years(ザ・ファースト・テン・イヤーズ)

今年の1月に発売されたノースカロライナ出身のニュースクール・ハードコア・バンドの200枚限定のコンプリート盤。09年に発売されたEP『Lifeblood(ライフブラッド)』から、11年の1stアルバム『Dirt City(ダート・シティ)』、14年に発売された2枚目のEP『Relentless(レレントレス)』の、いままで発売された3作品が収録されている。

彼らの特徴とは、オールド・スクールのシンプルなギターに、ニュー・スクールのストップ&ゴーなどのリズムやヒップホップな歌いまわしを合わせたサウンド。メタルからの影響があまり感じられない、骨太なハードコア・ギターサウンドが彼らの魅力だ。

サウンド全体からは、ギャングで不良の匂いがするニューヨーク・ハードコアからの影響が色濃く感じる。影響というよりもむしろニューヨーク・ハードコアを総まとめにしたような内容だ。スピーディーなサウンドからはAgnostic Front (アグノスティック・フロント)からの影響が伺えるし、ヒップホップな歌いまわしはMadball(マッドボール)、そして怒声のボーカルはSICK OF IT ALL(シック・オブ・イット・オール)とSheer Terror(シェラーテーラー)。ギターサウンドからはTERROR(テラー)からの影響を感じる。80年代から90年代、00年代と、3世代の特徴を網羅し、いいところだけを抽出し、ミックスしたサウンドなのだ。

初期のころから一貫してブレないクラシックなハードコアサウンド。そこには緊迫する日常のヒリヒリする空気が宿っている。