Last Gasp(ラスト・ギャスプ)
『Second Wave 2​.​0 (サウンド・ウェーヴ 2.0)』

クリーブランド出身のハードコア・バンドのデビューEP。激しく尋常でないテンションで絶叫する甲高いリアルな怒りが彼らの持ち味。

 

シンプルでスピーディーなイギリスの初期ハードコア・パンクよりのサウンドで、そこにAtari Teenage Riot (アタリ・ティーンエイジ・ライオット)のポリティカルな姿勢や、甲高いブチ切れ絶叫ボーカルを合わせた。怒りや嘆きといった感情で##といった思いを訴えかけている。彼らのハードコアとは、政治的な怒り。その姿勢は歌詞に顕著に現れている。

 

“Sun Through Trees(木々の間に差し込む太陽の光)”では、<強迫的な行動はナイフのように私を切り裂く、これを負の遺産として残すな>という歌詞があり、暗い絶望のなかでも一筋の希望の光明が差し込んでいると解釈できる意味を歌っている。“Just One Political Song(たった一つの政治の歌)”では、<欺瞞を暴露する、あなたを引き留めている壁を壊すハンマーになる>と歌詞で、抑圧しているシステムを壊して立ち上がれ、そして欺瞞を暴露しろと、自己啓発を喚起している。“Country Shaped Hole(カントリーシェイプの穴)”では、<北極圏にはもう氷がない。石油やガスを消費し温室効果ガスを大気中に増やすことを誰も気にしない>と、世界中で起きている地球温暖化について、いずれ人間が絶滅すると、警鐘を鳴らしている。

 

政治的な怒りに満ちた内容だが、ポジティブな意見が目立つ。現在は絶望的な状況だが、なんとかを変化させ、希望に満ちた未来へ変えていこうと努力する、理想に満ちた考えのバンドなのだ。

 

全身タトゥーまみれのバンドだが、マッチョで労働者階級特有の不良の匂いがするバンドではない。華奢でどこか文学的ないでたちがある。ヴィジュアル的な部分やブチ切れ具合、華奢ないでたちでは、Converge(コンヴァージ)に通ずるハードコアでもあるのだ。

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Gone Wrong(ゴーン・ロング)
『Attention(アテンション) 』

バーモンド州出身のスケーター・ハードコア・バンドのEP。14歳から17歳までの若いメンバーで構成され他バンド。17歳以下のパンク/ハードコア・バンドといえば、イギリスのEater(イーター)やAgnostic Front (アグノスティック・フロント)のライヴで一曲だけボーカルを担った、のちのMadball(マッドボール)のボーカル、Freddy Cricien(フレディ・クリシュアン)を思い出す。

 

どちらのバンドも初々しくて、オリジナルティーは皆無だったが、Gone Wrong(ゴーン・ロング)もBlack Flag (ブラック・フラッグ)やChain of Strength(チェイン・オブ・ストレングス)をもろパクしたようなハードコア。録音状態も悪く、音がこもり、お世辞にもこのバンドにしかないオリジナルティーや高いクオリティーがある作品とはいえない。だがここで感じ取ることができるのは、なにがなんでも絶対に歌わなければいけないという衝動と使命感。

 

曲のタイトルも、“New Song(新曲)“や、“Phones(電話)”、“Scared To Fight(戦うのが怖い)”、“Just An Excuse(ただの言い訳)”など、自分が感じた気持ちを率直に歌詞にした内容。そこには深い人生考察は、ポリティカルな怒りなどまったく存在ない。歌詞に意味などない。発展途上の過程にある未成熟な歌声に、むしゃくしゃする気持ちのせ、ただノイジーでうるさい音に憧れ、抑えきれない衝動がある。自分の知らない未知の世界や大都会の流行への憧れ。大人と同じことをしたい欲求。そんなクソガキで特有のイノセントで生意気さが詰まった作品なのだ。

 

バーモンド州という大自然に囲まれた片田舎の小さな街。その環境で育まれた、打算やバンド戦略のない初期衝動もろだしのハードコアは、無色透明な純粋さを感じさせる。あとで恥ずかしく後悔するような無謀な若さ。個人的に好感の持てる作品だ。

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Dry Socket(ドライ・ソケット)
『 Shiver(シバー) 』

ポートランド出身の新世代のハードコアバンドによる2作目のEP。彼らのサウンドとは、ハイスピード&メロディックでユール・クルー色の強いTear it Up(ティア―・イット・アップ)とKill Your Idols(キル・ユア・アイドルズ)に、ハイテンションで駆け抜けるメロディック・ハードコアのPaint It Black(ペイント・イット・ブラック)を、ブレンドしたアングリーなハードコア。

 

女性ボーカル、Dani(ダニ)の怒りを超えた尋常でない金切り声が印象的なバンドで、おもに政治的な怒りやジェンダーフリー、男女平等について歌っている。今作ではトランプ大統領に対する、憎悪を超えたヒステリックなまでの怒りが目立つ。1曲目の“Damn You(ダム・ユー)”は、ずっと地獄にいろ!という意味のスラングで、<短剣のように脅かす口、軽率な発言をする>と歌い、4曲目の“Muzzle(マズル)”は、<思考がない。嘲笑に対する暴力的な嫌悪感。気分を害す。>など、女性を見下し人種差別をする、傲慢で軽率なトランプ大統領への憎しみが込められている。

 

地球温暖化を無視し大企業や富裕層を優遇するといった、政治的な失策よりも、傲慢さや差別主義に満ちたトランプ大統領自身の性格を批判した個人攻撃が目立つ。金切り声でヒステリックなまでに激情を叫ぶボーカルが、扇情的で警告音のようなギターと相克し合う尋常でない怒りと嫌悪感に満ちたハードコアなサウンド。尋常でない怒りをぶちまけたテンションの高さもすばらしいが、ハードコア界隈ではあまりいない独特なコードのギターもこのバンドの魅力の一つでもあるのだ。

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