ホエン・ザ・ワールド・カムズ・ダウン オール・アメリカン・リジェクツ hiroko USMジャパン 2012-03-20 |
まぎれもなく最高傑作。80年代のゴージャスで派手なアメリカンロックに、オクラホマ特有のカントリーフォークと、水しぶきが飛び散るようなパワーポップの融合。いうなら1Stと2ndのいいところだけを併せ持った作品だ。それだけではなく、シンプルで素朴なアコースティックの曲から、女性とデュエットした大人の雰囲気を醸し出したバラード、ポピュラーなアメリカンポップスや民謡などに影響を受けた曲などもあり、新境地をみせている。この作品のいいところは、音へのこだわり。ギターが主張した曲もあれば、キーボードやピアノが中心となっている曲もある。奇怪なギターの音や、時を刻むようなキーボードの音、バイオリンなどを取り入れ、あらゆる音を試しながら、メンバー全員で話し合い、じっくり練られた作品だということが理解できる。
明るさのみで突っ走っていた前作までと比べると、悲しい気分やセンチメンタルなムードの曲もある。ボーカルもハイテンションな歌い方から、じっくり丁寧な歌い方に変わった。歌詞も恋愛のことが少なくなり、ハリケーン被害後のニューオリンズとか、社会的な内容が増えた。でもけっして悲観的ではない。暗いテーマでも最後には希望がある。心の視野が広がり、いろんな感情を知った。コントラストのあるサウンドにも、円熟味を増した歌詞にも成長のあとがあり、落ち着いた大人になった印象を受ける。だからといって毒素や負の感情はない。一貫して前向きで明るい人間でいるのは、さすがだ。