No Longer at Ease Beyond Some Records 1999-06-01 |
活動期間が88年から89年の、わずか一年間という、ニューヨーク出身のハードコアバンドのデビュー作。昨年発売されたライブアルバム『Dew It/Live Crucial Chaos Wnyu(デュー・イット!-ライブ・クーシャル・ケイオスWNYU)』に引き続き、89年に発売された唯一のオリジナル・アルバムを、今回リマスター使用でヴァイナル盤にてリリース。
彼らはニューヨーク・ハードコア・シーンがちょうどオールドスクールがユースクルーに変わっていく過渡期に現れたバンドで、その後のユースクール・シーンに与えた影響は大きい。彼ここで収録されている曲は、97年にCDで発売された”NO LONGER AT EASE”に収録されている曲と変わらない内容。14年に発売された『Dew It/Live Crucial Chaos Wnyu』は、ライヴの臨場感が伝わってくる、荒々しい演奏の勢いを重視した迫力ある作品だった。その作品に比べると、勢いと迫力や荒々しさは足りない。その理由は正確な演奏を重視しているからだ。そもそもこのバンドは、勢いや衝動よりも、ギターサウンドを中心とした演奏力を重視していた。だから周りからは“メタル・ティンジド・ハードコア(薄くメタルに染まったハードコア)と呼ばれていた。つまり小刻みに刻むギターのリフや、感情の高ぶりのようにうねるギターフレーズなどテクニカルな要素を取り入れ、しっかりとした演奏力や技術力を求めていたバンドなのだ。
あらためてじっくりと聴いてみると、当時のニューヨーク・ハードコア・シーンでは、彼らのサウンドが独特だったことが理解できる。たとえば“Ancient Head(アンシェント・ヘッド)”ではうねるグルーヴのギターフレーズを導入し、“Time Stand Still(タイム・スタンド・スティル)”では高速スピードだけでなく緩急をつけたサウンドを展開している。“What Awaits Us(ワット・アウェイツ・アス)”ではじっくりとギターメロディーを聴かせる曲だ。一辺倒で太い荒々しさだけではない、技術的な意味でバラエティーに富んだサウンドを展開しているのだ。NewYork Hardcore(ニューヨークハードコア)にここまでギターサウンドを持ち込んだのは、彼らが初めてではないか。Sick Of It All(シック・オブ・イット・オール)やYouth Of Today(ユース・オブ・トゥディ)は、緩急を使ったサウンドを展開している。それほどシーンに与えた影響が大きいアルバムなのだ。ニューヨーク・ハードコアの歴史を知る上では外せない一枚だ。