KENT(ケント)
『TILLBAKA TILL SAMTIDEN』

Tillbaka Till Samtiden (Back to the Contemporary)Tillbaka Till Samtiden (Back to the Contemporary)
Kent

Sony/Bmg Int’l 2008-02-04
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ギターメロディー中心のサウンドから、キーボードやシンセ、デジタル音を全面に取り入れたサウンドに変わってしまった07年発表の8作目。もはや清冽な美しいサウンドは失われた。

 

最初はデジタルに変わりがっかりしたのだけど、だが聞き込んでいくうちにある疑問が頭をもたげた。ケントは『ヴァペン&アミュニション』以降、ピカソの抽象画のように、醜さのなかにある美しさを追求しているように思える。まるで健康的に太った女性を、躍動感や至福あふれる描写で、美を見出したように。

 

今作では、薄暗く妖艶なまでのエロティックさが渦巻いている。暗闇のなかで鈍い光を放つようなビリビリと響く電子音や、ソフィスケートされた妖しげな警告音、暗闇で音がこだまするリヴァーヴのかかったボーカルなど、まるで泥酔状態のときに幻覚を見るような、サイケデリックな感覚がある。その視界がメラメラと揺らめく歪んだ感覚や、危険を感じながらも甘い誘惑のある世界が、非常に美しく、エロティックだ。

 

ケントにギターメロディーの清純を求めるのか、電子音が混沌と渦巻いている不純なサウンドが好きなのか、それは個人の好みでしかない。だが、彼らが美しさを追求している点は変わらない。独自の美を追求し、同じ作品を作らない姿勢、ぼくは頭が下がる。個人的には好きな作品だ。