ニューヨーク出身のハードコアバンドのデビュー作。ニューヨークのハードコアバンドといえば、MADBALL(マッドボール)やEARTH CRISIS(アース・クライシス)など、バンダナにジーパンなどのアメリカ的なファッションで、ギャング的アティテュードか、もしくはストイックなバンドたちが思い浮かぶ。だがこれらのバンドたちと比べると、彼らは一線を画したアティテュードを持っている。
日本人の女性、Ogiura Rhylliがボーカルのバンドで、そのアティテュードは、フェミニズム思想が強い攻撃的なハードコア。歌詞には、“腰抜け”、“ゴキブリ男”、“小便たれ”、“マチズモ(男性優位主義)”など、挑発的で汚い言葉が並ぶ。Lil Kim(リム・キム)、Big L(ビッグ・エル)、Nas(ナス)、Mobb Deep(モブ・ディープ)、Jay-Z(ジェイZ)、Missy Elliot(ミッシー・エリオット)などのヒップホップから影響を受けていると発言しているが、そのアティテュードは、BIKINI KILL (ビキニ・キル)などのRiot grrrl(ライオットガール・シーン)に近く、80年代の日本のハードコアバンド、THE COMES(カムズ)からの影響も多大に感じる。
そのサウンドはカムズのヒステリックで甲高いボーカルに、ユースクルーやマイナースレットなどの野太くノイジーなギターを合わせた、シンプルなハードコアパンク。ボーカルスタイルや汚い言葉を吐き捨てるリリックからはカムズの影響を多大に感じる。女性を軽んじる男性への嫌悪と怒りにあふれている。差別や見下されることに対する怒りがヒステリックで悲痛な叫びとともに巨大な塊となって襲い掛かってくる。まさにやさぐれたハードコアなのだ。
ニューヨーク・ハードコアのなかでも80年代の日本やイギリスの匂いを感じさせるクライムウォッチは異質で孤立した存在なのだ。