First Four Eps Off! Vice Records 2011-02-13 |
10年に発表された、元サークル・ジャグス/ブラッグ・フラッグのキース・モリスによる新バンド、offのデビュー作。メンバーもベースのスティーブン・マクドナルドは元レッド・クロス。マリオ・ルカバルカは元ホット・スネイク/ロケット・ザ・フロム・クリプトという、豪華な顔ぶれ。これがまたハードコアの原点というサウンドで、いかにも彼らしいプリミティブな衝動に満ちた作品に仕上がっている。
ここに収録されている曲は、 4枚立て続けに発表されたEPをアルバム一枚にまとめた内容だ。そのサウンドは、野太いロックンロール・サウンドをベースにした、オールドスクールなハードコア。すべての曲が1分台とファウストな展開。まるでサークル・ジャグスの1枚目を髣髴とさせる。勢いよく始まりあっという間に終わっていく。激しく簡潔な内容だ。だが、そこにはタイトさやシリアスさといった緊迫感とは無縁。どこか弛んだ部分がある。それもそのはず。そもそもキース・モリス自体、ヘンリー・ロリンズと比べると、そんなにバイオレンスな人間ではなかった。ブラッグ・フラッグ自体、マッチョで暴力的に変わり、警察に対しても武力で対抗するようになったのも、ヘンリー・ロリンズが加入したからだ。キースが在籍していたころは、そんなに暴力的ではなかったという。だれ構わずに<ファック・ユー>という言葉を投げかけ、アメリカ国旗を燃やしていたそうだが、観客に暴力を振るうことはなかった。酒とドラッグに溺れていた退廃的なバンドだった。ヘロヘロな脱力感と退廃的な姿が、キース・モリス時代のブラッグ・フラッグの個性だったのだ。そしてその個性を踏襲し、シモネタなどの下品さに、スピーディーで簡潔なサウンドを加え、個性を確立したのはサークル・ジャグス時代なのだ。
そのころと比べると、今作でもさほど変わっていない。シンプルなロックンロールをベースにしたサウンドや、人間の嫌悪な部分を描写したイラストでは、もろにサークル・ジャグス時代のキース・モリスの個性が出ている。マッチョと内省世界をただストイックに極めていったヘンリー・ロリンズと比べると、彼の場合、イノセントも失われていないし、いい意味で成長していない。 昔のイメージのままだ。しかしそこにハードコアに対する一途な思いを感じることが出来る。ハードコアの原点を変わらぬ想いで、忠実に表現した作品なのだ。