Overcast (オーバーキャスト)
『Only Death Is Smiling 1991-1998 (オンリー・デス・イズ・スマイリング:1991-1998) 』

Only Death Is Smiling 1991Only Death Is Smiling 1991
Overcast

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AFTERSHOCK(アフターショック)と並びメタルコアの基礎を作った伝説のバンドの、91年から98年にかけてのすべての作品を収録した3枚組みのコンピレーション・アルバム。メンバーは現Shadows Fall(シャドウズ・フォール)のボーカル、ブライアン・フェアと、現Killswitch Engage(キルスイッチ・エンゲージ)のギターマイク・D’アントニオを中心に、メタルコアのレジェントで構成されている。

 

その内容はディスク1には、1曲目から8曲目までは、94年に発表されたデビュー・アルバム、『エクスぺテイション・ディヌッション』から全曲と、9曲目から12曲目までは92年に発表されたデビューEP『ブリード・イントゥ・ワン』。14と15曲目は95年の2作目のEP、『スティアリング・ザ・キラー』から全曲。ディスク2の1曲目から9曲目までは97年に発表された2作目『ファイト・アンビション・トゥ・キル』全曲と、10曲目は96年に発表されたariseとのスプリットから。11、12曲目は96年に発表されたEP、『ベキニング・フォー・インディファレンス』、13から16曲目は『エクスぺテイション・ディヌッション』に収録された曲のデモヴァージョン。そしてディスク3の1から8はライヴ曲で、9から11曲目までは93年に発表されたデモ・シングル。12と13曲目は未発表曲で、14曲目がブラック・サバスのトリビュートから。91年か98年まで活動した際に発表された曲がすべて網羅されている内容だ。

 

オーバーキャストのデビューEPが発表されたのが92年で、デビューアルバムが94年。彼らの活動期間はちょうどアース・クライシスとかぶる。当時のヘルメットのようなスローテンポで金属質で重いリフを中心としたサウンドのメタルが主流で、アース・クライシス系のニュースクール・ハードコアもそこから発展した。オーバー・キャストも同様でそのサウンドからは、ヘルメットの影響が色濃く感じる。だがアースクライシスとの違いは、メタルパートをさらに貪欲に取り入れた部分だろう。ナパームデスばりのブラストビートと絶叫、メタリカのような叙情的なメロディー。スピード感こそまったくないが、グラインドコアやデスメタル、スラッシュメタル(叙情的な部分だけ)などのいろんなメタルを貪欲に取り入れたサウンドなのだ。たとえるなら、アースクライシスのニュースクール・ハードコアに、メタルのエッセンスを5倍近くさらに追加したサウンドといえるだろう。

 

ニュースクールをさらにメタル化したサウンドで、メタルコアの先駆者として当時としては新しいサウンドであったことは事実だ。だが彼らがブレイクしなかった理由は、ヘルメットという先駆者からの影響が抜けきれなかったからだ。そのあと結成されるキルスイッチ・エンゲージやシャドウズ・フォールでは、もはやヘルメットからの影響がまったくなくなっている。デスメタルを含むメタル7割でハードコア3割の折衷スタイルで、スピーディーなメタルコアは、当時としては画期的なサウンドであった。まさに新しい時代のサウンドであったのだ。

 

そういった意味ではオーバーキャストはメタルコアの先駆者であるが、時代そのものを変えるサウンドではなかった。ちょうどニュースクールとメタルコアをつなぐ中間的な役割をしたバンドなのだ。だがメタルコアの進化を知るうえでは、このうえなく重要な作品であることはまちがいない