フライ・ザ・フラッグ ダウン・バイ・ロウ ビクターエンタテインメント 1999-10-21 |
99年に発表された6作目。イギリス空軍を意識したマークや、ベスパに乗ったジャケットを見てわかるとおり、さらにモッズに傾倒している。“フライ・ザ・フラッグ”や“プロミシング”は、前々作のようなスピーディーで爽快なパンクな曲であるが、それは最初の2曲だけ。あとは“ナッシング・グッド・オン・ザ・レディオ”や“マン・オン・ナイト”などの、ジャムのようなモッズな曲と、昔のイギリス・ロックな曲がある。変わったところでは、スコティッシュトラッドの“ブレイクアウト”や、日本盤のみのボーナストラックに収録されている“ワイルド・ローヴァー”と“オール・フォー・ミー・クロック”では、カントリーを展開している ベテランバンドになると、ルーツ回帰の傾向にあるが、彼らも同じく古きよき音楽を追求している。でも追求しているのは、円熟味や味わい深さではない。若者のファッションや過去のブームを追求している。そういった意味では、デイヴ・スマイリーの趣味が大爆発している作品だ。
とはいっても歌詞は相変わらずパンクしている。今作では自由がテーマになっているようだ。ここでいう自由とは、闘争によって勝ち取るものだと歌っている。“フライ・ザ・フラッグ”では、<残忍な仕打ちを受け、思い知らされたけど、俺は生き残ってやる>と自らの自由について歌い、“ナッシング・グッド・オン・ザ・レディオ”では、<バック・ストリート・ボーイズやボーイズⅡメンなどの、あんなクソみたいな曲は二度と聴きたくない>と、ラジオのミュージック番組を批判し、いいものはいい悪いものは悪いと表現の自由について歌っている。そして“ブレイクアウト”では、<スコットランド、アイルランド、ウエールズは解放されなくてはいけないと、>独立国家の紛争について、弱者を支持する立場で歌っている。社会情勢から、自分の内面、世間に対して反抗的で、アンダーグラウンド志向にいたるまで、あらゆる形の自由が提示されている。
全盛期の魅力だったスピーディーで爽快なダウン・バイ・ロウのサウンドが失われてしまったのは残念だが、世間に対して反抗的で、熱血漢でガッツに満ち溢れているパンクスピリットは失われていない。そのパンクスピリッとがなによりもこの作品の魅力だろう。