Water & Solutions Far Sony 1998-03-10 |
圧倒的にヴァラエティーが豊富な作品に仕上がった98年発表の4作目。ここでは、うねるような重いグルーヴや憂鬱さこそ薄れたが、圧倒的なオリジナルティーを放っている。心地よい低音のベースのリフから、ざくざく刻むギターのリフ、メロコアっぽい曲もあれば、傷口をなでるような優しい叙情的な曲もある。ハードコアに多彩なアレンジを取り入れたおかげで、ハードコアバンドに多い、同じキーの似かよった曲が続く現象は1曲としてない。それが最高傑作といわれるゆえんだろう。
だが全体的にバランスが悪い印象を受ける。とくに前半。エッジの利いたハードコアナンバーの迫力に、弱々しさが特徴なジョナーのボーカルが負けている。うってかわって8曲目以降の後半は、スマッシュキング・パンプキンズの影響が強い叙情的なナンバーが続く。こちらは悲哀に満ちた子供の暗く沈んだ声のようなボーカルが、生き生きとしている。
おそらく激しい曲にジョナーの声が合わなかった理由は、ギターのショーンと音楽の方向性がずれてしまっているせいではないか。個人的には、ギターのショーンがハードコアを趣向としていて、ジョナーが叙情的な曲を突き詰めたかったように思える。のちにジョナーが「このアルバムの構成にほれぼれしていた。これ以上の作品を作れないと思った」と発言しているが、激しさ、アレンジ、脆さ、オリジナルティーのバランスが、全作品を通じて一番とれていると本人たちは思っているようだ。
個人的にはバランスが悪いように思えるが、本人たちにとっては、そのバランスの悪いボーカルは個性であり、どちらに偏ることなく両者の個性が反映され、妥協点ぎりぎりの作品だったのだ。
この後12年近く活動を休止するわけだが、その間、伝説とバンドといわれた。ポスコア史上に名を残した名盤であることに間違いはない。