ブラン・ニュー・アイズ パラモア ワーナーミュージック・ジャパン 2009-10-20 |
09年発表3枚目。このアルバムを発表する前年に映画トワイライトに主題歌を提供し、そのサウンドトラックが200万枚を記録する売り上げを獲得したそうだ。いちやく有名となり、その状況下で今作は発表された。バンドも上昇気流に乗り、自信に満ちた作品となるかと思いきや、ダークでネガティヴな要素が強い作品に仕上がっている。
その理由は、メンバー間の人間関係がボロボロの状態にあったからだという。ここ数年、忙しさも手伝い、メンバーとの意思の疎通がうまくとれておらず、軋轢があったそうだ。
だから歌詞には<良くなる前に我々は崖に向かっている>だとか<目標を見失った。しかしわたしたちは新たな目標を見つけられることを信じている>といった、絶望的な状況について書かれている内容が目立つ。実際アルバムには、メンバーに伝え切れなかった気持ちがテーマになっているそうだ。
とはいっても、批判だけで終わっているわけではない。この辛い状況から抜け出し、バンドを始めたころ初心を取り戻して、また気持ちを共有しながら活動が出来ると力強く希望をこめて歌っている。まさにアルバムタイトル『ブラン・ニュー・アイズ(新しい視点)』を獲得するために。
今作はけっして悪い作品ではない。歌詞こそネガティヴで批判的な内容が多いが、サウンド的は確実に成長している。どちらかといえば前々作に近く、ジミー・イート・ワールドやサニーディ・リアル・エステイトを発展させたエモサウンドだ。繊細なナイーブさを紡ぎだすメロディーと、トーンこそ暗いが、強気で力強いヘイリーのボーカルが拮抗するサウンドは、お互いが理解を求め合いながらも、ぶつかっているような、もの悲しさを感じる。強気と繊細さというアプローチこそ真逆だが、理解されないことへの悲しみや、すれ違いといった共通意識を生みだしている。それが悲しみを倍増させる相乗効果をもたらしている。
このあとサウンド面を担当していたジョシュとザックの兄弟が脱退。ジョシュがヘイリーと付き合っていたことを告白。ジョシュはパラモアというバンドが、ヘイリーのソロプロジェクトだったと不満をぶちまけたそうだ。結局、お互いが歩み寄ることが出来ないまま、すれ違いのまま、終わってしまったようだ。