![]() | サーヴェイランス ヴァニシング・ライフ Hostess Entertainment 2016-12-20 |
元ゴリラビスケッツのウォルター・シュレイフェルズ(Vo)、ライズ・アゲインストのザック・ブレア(Gt)、AND YOU WILL KNOW US BY THE TRAIL OF DEAD(アンド・ユー・ウィル・ノウ・アス・バイ・ザ・トレイル・オブ・デッド)のオートリー・フルブライト(ba)、バッド・レリジョンのジェイミー・ミラー(Dr)ら、アメリカパンク界のスパースターたちにより結成されたバンドのデビュー作。
そもそもこのバンドが結成された経緯は、ベースのオートリー・フルブライトがウォルターに声をかけたことがきっかけだそうだ。ウォルターは当初、オートリーが声をかけてれたが、何も起こらないと思っていたらしい。そしたらある日、ジェミーとオートリーがデモを作ってウォルターに送ってきたそうだ。坂を転げるように瞬く間にバンドが進展していったそうだ。
そんな経緯があるせいなのか、このバンドに関してウォルターは、サウンドのことに対してはほとんどノータッチで、すべてジェミーとオートリーとザックに任せている。もっぱらボーカルに専念しているそうだ。
ウォルターとしてはいままでバンドを組んだ人たちは、ほぼレベシューション・レコーズと関係した人たちだった。ニューヨーク・ハードコアのコミュニーティーに何が知ら関わっていた人たちとしてしか、バンドを組んだ経験がなかったそうだ。それが今回初めて、西海岸の人たちやメロコア、オルタナなどの違うジャンルの人たちとバンドを結成したそうだ。ウォルターにとって何もかも新しいチャレンジだったそうだ。
肝心のそのサウンドは、2コード2フレーズを繰り返していくエクスペリメンタルなポスト・ハードコア。煽情的な2コード2フレーズを、同じ調子、同じ勢い、同じ感情で突き抜けていく。ギターアレンジにこだわったサウンドで、ところどころにアンド・ユー・ウィル・ノウ・アス・バイ・ザ・トレイル・オブ・デッドぽさを感じることができる。だがライズ・アゲインストっぽさは全く感じられない。8曲目の“Image(イメージ)”などからはクイックサンドのようなギターを感じるし、聴けば一発でウォルターのギターだと分かるようなサウンドの曲もある。
サウンドに対しては全く関知していないというが、ところどころにウォルターのギターの個性を感じるのは、ぼくだけなのか?個人的にはこのバンドもまたウォルターの趣味が大爆発した作品といえる。
決してそれが悪いわけではない。むしろぼくはウォルターらしさを感じるからこそ、この作品がとても好きだ。その理由はシンプルな2フレーズ2コードを執拗に繰り返すことによって、むしろ混乱した内面世界のような複雑さが生まれているからだ。まるで印象派の画家の絵のように光の部分がはっきり目立つから余計に影の部分が際立ってくる。サイケデリックでありながら攻撃的で煽情的な気分を煽り立てるサウンドなのだ。サウンドの姿勢が攻撃的なパンクだし、とてもカッコいい音だ。個人的には今年はベスト10に入るほど好きな作品。