EBULLITION Recordsのオーナーであるケントが、ヨーロッパツアーを敢行したときに、発掘したヨーロッパのバンドたちを集め、収録した92年発売のコンピレーション。 EBULLITION Recordsといえば、当時アメリカではそんなに有名でなかった激情コア、ストレートエッヂ・ハードコアシーンというジャンルを積極的に紹介していたレーベル。アメリカで、ヨーロッパの激情コア、ストレートエッヂ・ハードコアのバンドたちを紹介しようと、企画されたのが、今回の作品。ここに収録されているバンドは、Finger Print, Kina, Gnezl Drei, Wounded Knee, Condense, Nothing Remains, Ivich, Voorhees, Ego Trip, Abolition, Blindfold, Married To A Murderer, and Hypocritical Societyといったバンドたち。
VA (EBULLITION) XXX SOME IDEAS ARE POISONOUSは、どのバンドもストレート・エッヂに対する強烈な拘りと、個々の信念を持っていた。それと比べると、強烈な信念やオリジナルティーのあるサウンドを展開しているバンドたちは少ない。あくまでもケントが共演したバンドたちをアメリカで紹介するため、ラフの気持ちでコンピを制作している。
ここで収録されているバンドたちは、Conflict (コンフリクト)系のノイジーなハードコアから、MINOR THREAT (マイナースレット)系のスピーディーなハードコア、Fugazi (フガジ)のようなエクスペリメンタルなサウンドのバンド、RITES OF SPRING (ライツ・オブ・スプリング)系のエモーショナル・ハードコア、ポップエモなど、それなりにストレート・エッヂなバンドから影響を受けているのが理解できる。やはりヨーロッパだけあって、本場のコンフリクトからの影響を感じるのがうれしい。
ただVA (EBULLITION) XXX SOME IDEAS ARE POISONOUSに収録されているバンドたちのような、シリアスさはここでは感じない。おそらくこの時点ではまだ、ストレート・エッヂがヨーロッパで浸透していなかったからだろう。ストレート・エッヂとは、ベジタリアンの延長上にあるような軽さなのだ。
だからと言って決して悪いコンピではない。ヨーロッパでは、この2、3年後、マザーアースやアニマル・トゥルースなどの、良質なストレート・エッヂ・コンピレーションが出てくる。ヨーロッパにストレート・エッヂの布石を打った、初めての作品なのだ。