Finding the Rhythms Hot Water Music No Idea Records 1999-02-02 |
フロリダのエモーショナル・ハードコア・バンドの95年に発表したデビュー作。95年当時、アメリカ・ハードコア・シーンは、音楽的実験性を求めるポスト・ハードコア、マッチョイズムを排し内省的な方向に進んだエモーショナル・ハードコア、音の暴虐性を追求しメタルとより深く結びついたニュースクール・ハードコア、メロディーを取り入れたメロディック・ハードコアなどに枝分かれしていた。そのなかでもエモーショナル・ハードコアは、94年のウィーザーのブレイクも手伝って、とりえのないごく普通の冴えない男と結びつき、ポップにソフィスケートされ、エモへと進化していく。
ホット・ウォーター・ミュージックは、エモがまだ地下音楽だったころに現れたバンドだ。そんな存在である彼らはエモーショナル・ハードコアのなかでも異色の存在へと変貌を遂げていく。そもそも彼らはポップ・ロックからの影響はない。サウンドのベースにあるのは、エンブレイスやダクナスティー、ハスカードゥなどに影響を受けたハードコア。野太く分厚いギターにメロディーパートが絡む展開。がなりごえを重視した男臭いのボーカル。シンプルで武骨なサウンドが彼らの特徴だ。
初期の音源を集めたこの作品は、編集盤的な内容だが、デビュー作といえる。だがまだ先駆者たちの影響から抜けきれていない。歌詞は、<私は逃げることができるなら、その場所を見つけたい>とか、<私は気楽さと時間を必要としている>といったエモ特有の内面の葛藤を歌った内容が多い。彼らの本領が発揮されるのは、次の作品以降。彼らは初期衝動を売りにしているバンドではないが、この作品にはルーツが分かるし、目指している方向性も端的に分かる。そういった意味では、コアなファン向けの作品だろう。