Joyce Manor (ジョイス・マナー)
『Cody (コーディ)』

CODYCODY
JOYCE MANOR

EPITA 2016-10-20
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アメリカはロサンゼルス郡南のトーランス出身、エモ・バンドの16年に発表された4作目。彼らの特徴といえば、イギリスのネオ・アコースティックを、荒くがなり立てるサウンドだった。いうならネオアコのような都会的に洗練されたスタイリッシュな洒脱さを排除して、激しくエモーショナルにかき鳴らす。それが彼らの特徴だった。

 

出世作となった前作『Never Hungover Again (ネバー・ハングオーバー・アゲイン)』は、ネオアコにアメリカのメロディック・パンクなど、いろいろな要素を取りこみ、バラエティー豊かなサウンドに仕上がっていた。タイトルを直訳すると、二日酔いを二度と繰り返さない。おそらく“後味の悪い経験を二度と繰り返さない”という意味なのだろう。その意味が示すとおり、歌われている内容は、青春時代の初体験の苦い思い出。現実と理想とのギャップで戸惑い落ち込み、初恋が後味の悪い思い出として残るような、青春の一コマがテーマだった。

 

青春さながらに熱くエモーショナルに勢いと初期衝動を重視していた前作。今作ではエモーショナルな勢いや粗削りさがなくなり滑らかな仕上がりに、落ち着いたサウンドに変化した。いままでアコースティック中心のサウンドであったが、今作では青空のように明るいギターが特徴のミドルテンポのポップソングから静謐感漂う牧歌的なバラードなど、ポップロックを追求し、バラエティー豊かなサウンドに変化した。曲ごとに喜怒哀楽の表現を変え、いろいろな感情表現ができる大人のバンドになったのだ。

 

今作も青春の一ページを切り取った歌詞は健在。テーマは前作同様、憧れや理想だったものへの失望をここでも語っている。やりたい何かが見つからない将来に対する不安と苛立ちや、好きだった彼女への失望など、18歳前後の大半の若者が経験し、考え感じるような内容がテーマだ。初体験が後味の悪い経験と感じる若者がより限定された人だったのに対し、今作では大多数の気持ちを代弁したより広い視野に立っている。極上にポップに仕上がった楽曲といい、歌詞も大多数に共感され理解できるような広い視座でこの作品は作られているのだ。個人的には前作の粗削りな勢いと衝動を重視したサウンドのほうが好きだったが、大人しくなった今作は前作以上に完成度が高い作品であることに間違いはない。