サンディエゴ出身のエモーショナル・ハードコア・バンドの94年に唯一発表された8曲入りのEP。このバンドもまた、アップルシード・キャストのメンバーが影響を受けたバンドとひとつとしてあげ、エモの先駆者のひとつとして語られるバンドだ。日本ではあまり評価されることのなかったバンドだ。
そのサウンドは、ライツ・オブ・スプリングとテキサス・オブ・リーズンの中間に位置する。ジャンル的にはライツ・オブ・スプリングから進化したエモーショナル・ハードコアだ。ライツ・オブ・スプリングとの違いは、部分的にメロディーパートを導入した部分。あとにテキサス・オブ・リーズンによって、静がよりクローズアップされ、静と動のアップダウンこそがエモーショナル・ハードコアのサウンドの特徴として語られていくことになる。
サウンドの8割をしめる荒々しく力強いギターと全力を出し切るエモーショナルな歌声のサウンドは、ライツ・オブ・スプリングからの影響が強く、残り2割のメロディーパートと、エクスペリメンタルなサウンドには、彼らならではのオリジナルティーを感じる。透明で繊細で冷たく美しいメロディー・パートを取り入れた部分は、のちにテキサス・オブ・リーズンやミネラルによって、さらにメロディーがデフォルメされ、エモーショナル・ハードコア=不良になりきれないうじうじした奴がやる音楽という代名詞になっていく。そしていびつな音の不協和音ギターやピアノが反復するプログレのように長いパートなどの雑音を取り入れた実験性には、あとにアップルシード・キャストによってこの路線がさらに極められ、ポストロックやプログレを取り入れたエモという新しい形を提示していくことになる。
ともあれエモの静の部分を最初に導入したバンドであり、実験性なども大胆に取り入れ、構成のバンドに多大な爪あとを残した。エモを語る上で重要な作品だ。