ロサンゼルス郡南トーランス出身のインディー・エモバンドの5作目。一途な感情で熱くエモーショナルな衝動的だった前々作、ほろ苦い青春の1ページをぎゅっと詰め込んだ前作と比べると、ずいぶんと落ち着いた印象を受ける。
今作もオーセンティックなアメリカン・ロックンロールや、ネオアコースティックをアメリカ中部の土臭い牧歌的な素朴さに変貌させたサウンド路線に変わりはない。それにしても手作り感というか、素朴さがすごい。Weezer(ウィーザ)をさらにさえない感じにして、ファッションセンスの古いカントリーパーソンにしたような、純朴さがある。まるでアメリカ中部をイメージさせる牧歌的なのどかさ。どこまでも続く地平線と渇いた赤い土の大地や、広大な地平線でキャンプファイヤをしながら夜空を見上げているような解放感がある。
日本の田舎の大自然の魅力を歌ったのが井上陽水の“少年時代”だとするなら、もしかしたらアメリカの田舎の魅力が詰まっているアーティストといえるのかもしれない。そんな郷愁と解放感にあふれている。日本人の郷愁や大自然の匂いとは180度異なるが、じつにディープなアメリカがつまった作品だ。