Vital Force(ヴァイタル・フォース)
『Fetus Of Mankind(フティス・オブ・マンカインド)』

ロシアはイジェフスクという工業都市を拠点に活動するストレーエッジバンドの2作目のEP。Raid(レイド)やAbnegation(アブネゲーション)など、ハードラインと呼ばれたストレーエッジの強硬派の思想と音楽から多大なる影響を受け、活動を始めたバンド。

 

ハードラインとは反薬物、反アルコール、反中絶、反性差別、反人種差別と、動物の権利などの思想を掲げ、肉や魚、卵や乳製品を含む動物性たんぱく質を摂取しないだけでなく、貧困国から搾取するチョコレートやコーヒーまで口にしない、節制に節制を重ねたストイックな思想なのだ。

 

Vital Force(ヴァイタル・フォース)の場合、環境保全や自然環境を守るといった活動に力を注いでいるバンドだ。歌詞には夕焼けやオーロラなど、大自然の美しさをモチーフにした内容が目立つ。

 

前作はRaid、Abnegationから多大な影響を感じるニュースクール系ハードコアにレベリューション・レコーズ系のスクリーモを加えたサウンドだったが、今作ではグラインドコアからメタル、サイケデリックなどを加え、音楽的は幅が広がった作品に仕上がった。とくにサイケデリックな要素を取り入れたことによって、大自然の美しさや安らぎ、厳しさとトランシーな恍惚感が加わっている。若干音の迫力が欠ける部分があるが、シリアスさは確実にサウンドに反映されている。確実に成長しているし、発売されるであろうフルアルバムが、期待させる作品だ。