カリフォルニア州ゴリータ出身のメロディックパンク・バンドの5年振りとなる9作目。Lagwagon(ラグワゴン)といえば、60年代のレトロ・アメリカや、広大な麦畑が広がるアメリカの古き良き田舎の原風景など、トラディッショナル・アメリカをメロディック・パンクで表現してきたバンドなのだ。
初期のころから一貫してブレないメロディック・パンクを演り続けている。ラグワゴンの個性とは、バタバタした超スピードのドラムに、スローテンポなギターと、ボーカルの歌い回しという、どこか天然ぽさを感じる独特なサウンド展開しているところにある。
サウンド・スタイルを確立した『HOSS(ホス)』から、メロディーギターを重視し、音のバラエティーが増えた『blaze』、アコースティックやエモやジャズピアノなどを取り入れた『Hang(ハング)』と、作品を重ねるごとに、曲のバラエティーと表現の深みが増し、味わい深い作品に仕上がっている。まるで古くなるほど温かさと魅力が増すアンティーク家具のように、経年美に似た味わい深さがあるのだ。
そして今作では、テクニカルなメタルギターや、悲しげなピアノ、低くしゃがれた声で歌うボーカルなど、80年代のメタルなどの古い要素を加えている。悲しみに満ちたダークな曲が多く、哀愁と郷愁に満ちたサウンドからは、同じ過ちを繰り返すような大人のほろ苦い切なさを感じる。まるで人生の苦い経験を経た先で鳴らされている音だ。頑固な職人のようにメロディックパンクの伝統をかたくなに守り、変わらないことでより深みが増している。まさにラグワゴンらしい作品なのだ。