TOTAL FUCKING DESTRUCTION (トータル・ファッキング・ディストラクション)
『…to be alive at the end of the world(世界の終わりに生きる)』


元BRUTAL TRUTH(ブルータル・トゥルース)のドラム、Rich Hoak(リッチー・ホーク)が率いるバンド、TOTAL FUCKING DESTRUCTION(トータル・ファッキング・ディストラクション)の5作目。前作から2年という短いスパンで発表され、充実ぶりがうかがえる。

 

今作もBLACK FLAG(ブラッグ・フラッグ)からの影響が強いシンプルで扇情的なハードコア・ギターをベースにしたグラインド・コア。そこにストーナーロックから、サイケ、ファンクなどの新しいもの取り入れ、エクスペリメンタルでありながらも、ファストでプリミティブな衝動にあふれたサウンドを展開している。

 

本能の塊のようなけたたましい勢いのドラミングは、あいかわらず強烈で、このバンドの唯一無二な個性を放っている。静かでスローなギター、シャウトするボーカル、土石流のような勢いのファストな曲などと交じり合って、理性のメーターの振り切れた、トライバルでプリミティブなグラインド・コアを展開している。そこにはグラインとコア特有の過激な暴力性やブルータル色が一切ない。手数が多く壮絶なドラミングながらも、曲のペースはスロー。速さとスローが混じった、どこか不思議なサウンドなのだ。

 

アルバムのタイトルは『世界の終わりに生きる』。現在、大規模洪水や干ばつ、山火事などの異常気象に、コロナ・ウイルスによる疫病のパンデミックなど、人類滅亡を予見させる出来事が世界中で頻繁に起きている。世間を取り巻く空気も、怒りや憎しみに満ち、どこか殺伐としている。アルバムタイトルの『世界の終わりに生きる』とは、人類の終わりを迎えることを覚悟しながら生きるという意味なのだろう。といってもそこには悲しみや危機感などのシリアスな感情はなく、シンプルで簡潔な言葉で綴っている。世界の終わりを客観的にみているような、たそがれや憂い、倦怠感にも似た終末観が漂っている。将来戦争に発展するような悲惨な未来を予見しているような、珍しくストレートな表現がちりばめられているが、そこには平和を願う気持ちがあるのだ。

 

頭でっかちに考えるのではなく、本能に任せ直観を信じろ。と、いうようなプリミティブな衝動が心にダイレクトに伝わってくる。今作でも新種のグラインド・コアを提示しているし、シンプルで簡潔で野性味あふれた素晴らしい作品なのだ。

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