FOUR YEAR STRONG(フォー・イヤー・ストロング)
『 BRAIN PAIN(ブレイン・ペイン)』

イージコア・バンドのじつに5年ぶりとなる7作目。17年に発表したアコースティック・アルバムを含めると3年ぶりのリリースとなるが、現在も止まることなく活動を続けているバンドだ。

 

重いリフからムーヴシンセ、シンガロング、青春コーラスにいたるまで、ポップ・パンクの良いところを集め凝縮し、自らのサウンド・スタイルを確立した『Rise or Die Trying(ライズ・オア・ダイ・トライニング)』。前作で確立したサウンド・スタイルを、さらにブラッシュ・アップし強固なものにした『Enemy of the World(エネミー・オブ・ザ・ワールド)』。ハードコアのような激しさを追求した『In Some Way, Shape, or Form(イン・サム・ウェイ,シェイプ,オア・フロム)』。ギターが野太くパワフルに変化した『Four Year Strong(フォー・イヤー・ストロング)』と、メロディックパンクという枠のなかで、つねに新しいものを取り入れ、最前線の進化を遂げてきた。Green Day(グリーン・ディ)から始まり、Blink 182(ブリンク 182)、New Found Glory(ニュー・ファウンド・グローリー)、Motion City Soundtrack (モーション・シティー・サウンド・トラック)へと続くメロディック・パンクの歴史を、一つにまとめ進化したサウンド。それがFour Year Strong(フォー・イヤー・ストロング)の個性なのだ。

 

そして『Brain Pain(脳の痛み)』と名付けられた今作では、いままでになく思慮的で深みのある作品に仕上がっている。アルバムを制作するにあたって、2年前に集めたアイデアを、サウンドで表現するのに1年半かかったという。それほど練られた内容で、全アルバムのなかで、一番凝った作品といえるだろう。

 

R&Bからファンク・ギター、ブレイクダウンにストップブレイク、カットタイムパーツなどのギターテクニックに、ブラストビートなどをアレンジに加えたドラム。複雑なテクニックを織り交ぜたカオティックなメロディック・パンク。スピーディーな曲は“Mouth Full Of Dirt (マウス・フル・オブ・ドラフト)”のみ。スピードよりもリズムを重視したパワフルなサウンドに仕上がっている。

 

『脳の痛み』と名付けられた今作は、心の葛藤や悩みなどからの解決といった内容がテーマになっている。“It’s Cool(イッツ・クール)”は、<私はより良い何かを発見するまで地獄のように検索する>と歌い、“Get Out Of My Head(ゲット・アウト・オブ・マイ・ヘッド)”は<悩みを取り出す>と、練りに練ったサウンドもさることなら、悩み考え抜ききながら解決方法を見出そうとしている姿勢がうかがえる。

 

暗く内省的なテーマだが、アルバム全体を貫いているのは、希望に向かっていく熱さと明るいポップさ。悩みというダークな部分を見せつつも、それを乗り越えていこうとする姿勢がある。マイナスの要素をプラスに変えていく力があり、そういった意味では今作でもキラキラと輝いている。夢と希望に満ちあふれたキラキラと輝く明るい彼らの特有のアティテュードは、初期のころがブレることなく一貫して今作でも貫かれているのだ。

 

メロディック・パンク界に新しいサウンドを提示していく意欲に満ちあふれている。おもちゃ箱のようにカオティックで複雑に入り組んではいるが、聴くたびに新しい発見がある作品なのだ。