CROW KILLER(クロウ・キラー)
Enslaved To One

ソルトレイクシティ出身の新世代のメタルコア・バンドのデビュー作。CODE ORENGE(コードオレンジ)やJESUS PIECE(ジーザス・ピース)などの新世代を代表するヘヴィーロックをベースに、Congress(コングラス)やLiar(ライアー)などのベルギーのH8000シーンのバンドと、Detain(ディテイン)やVamacharaなどヘビーモッシュ・ハードコアを融合した、メタリックなハードコア・サウンドを展開している。

 

CROW KILLER(クロウキラー)というバンド名は、おそらくインディアンを虐殺した西部開拓者の名前から採ったのだろう。何やら保守的な匂いの漂うバンドだ。曲のタイトルも“Hang Tight”(じっと堪える)や“Stand and Suffer”(立ち上がり感情的な痛みを感じる)など、暴力に耐え忍び憎しみと怒りを増幅させているようなマッドな感情を連想させる。

 

そのサウンドは、CODE ORENGE(コードオレンジ)以降のダウナーで退廃的なヘヴィネスだ。激しく重い金属質なリフと、妖艶で不気味に漂う退廃的なギター・メロディーの組み合わせで、どろどろとした狂気に満ちている。CODE ORENGE(コードオレンジ)やJESUS PIECE(ジーザス・ピース)と比べると、アレンジも展開もシンプルで、プリミティブなハードコアやメタルに近い。デス声よりも叫び声に近いボーカル。刹那的な爆発力のあるギター。厳かな静けさのスローパートとマッドなハイテンションを折りませながら、発狂した感情を紡いでいく。リズム感も悪くところどころに不協和音を感じる。だがその不協和音こそがおどろおどろしい不気味さの原因なのだ。

 

CROW KILLER(クロウキラー)のおどろおどろしい不気味さとは、保守的な因習の狂気さが起因している。憎しみが憎しみを呼び暗殺されるような恐怖。巨大権力に逆らうと思い知らされるような畏怖がそこにはあるのだ。古き因習に満ちたおどろおどろしい恐怖を、メタルにうまくで取り入れた、新世代を代表するバンドなのだ。