Murphy’s law(マーフィーズ・ロー)直系のニューヨーク・ハードコア・バンドの10年ぶりとなる9作目。彼らがパーティー・バンドと呼ばれている理由は、金色のスパンコールのブーティーショーツを着て、紙吹雪の大砲を群衆に撃ち込むパーティーのようなライブパフォーマンスにある。
そのサウンドは、スピーディーなハードコアを中心とした、シンプルでメタルのないオールドスクールなハードコア。Oiなどを取り入れ、熱く男くさいサウンドを展開。ゴリゴリなオールドスクール・ハードコアだが、どこかGORILLA BISCUITS(ゴリラ・ビスケッツ)のような、ポジティヴなポップ感が漂っている。
今作では、さらにネイキッドむき出しのハードコアを展開。スピーディーで野太いサウンドが、さらに勢いと迫力を加速させ、Oiやシンガロング、気合の入ったボーカルなど、男くさい要素をさらにパワーアップさせている。アメリカ国家やアイリッシュフォークなどのアンセムや民謡的なフレーズを取り入れ、誇りや楽しさは倍増されている。そこにはまるでクラッカーの糸くずや派手な飾りつけなどがごった返しているパーティーのような賑やかさと、何が飛び出してくるか分からないサプライズ感が漂っているのだ。
たしかに祝福ムードに満ちた“Punk Rock Wedding Song(パンクロック・ウェディング・ソング)”や、“Brew Crew”のような飲酒の賛美歌、“I’m Gonna Puke”のようなパーティーの楽しさなどを全面に出した曲が多いが、シリアスな一面もある。“Separation Anxiety(分離不安)”では、保守とリベラル、人種間の対立など、しっかりと社会問題にも目を向けている。
だが総じて熱くファナティックで楽しい気分にさせる。ニューヨーク・ハードコアのなかでも、古き良いものを蘇らせパワーアップさせ、パーティーとファン要素を重視した個性的な作品なのだ。