GOD’S HATE(ゴッズ・ヘイト)

新日本プロレスでも活躍する人気プロレスラーのBrody King(ブロディ―・キング)がボーカルを担当し、TERROR(テラー)やTWITCHING TONGUES(トゥウィッチング・タングス)のメンバーで構成されたGOD’S HATE(ゴッズ・ヘイト)の5年ぶりとなる2作目。

 

アメリカではメタリック・ハードコアというジャンルで呼ばれている彼らだが、そのサウンドはメタルバンドのMastodon(マストドン)や、90年代のメタリックなニューヨーク・ハードコアのAll Out War(オール・アウト・ウォー)やHATEBREED(ヘイトブリード)からの影響を色濃く感じさせる骨太なハードコア。

 

GOD’S HATE(神を憎む)というバンド名が示す通り、歌詞は憎しみについての内容が多く、破滅的な世界観を追求している。“Finish The Job(仕事を終える)”では<平和主義は癌>だと歌い、“God’s Hate(神の憎しみ)”では、<憎むべき献身と神への信仰~人類に対する神の憎しみ>と歌っている。“Eternity Of Hate(永遠の憎しみ)”では<戦争を行うため遺伝的に考案された>と、人間の性(さが)と業について言及し、“The Valley Beyond (818)(向こうの谷(818))”では<聖人の谷、神の憎しみの震源地>と、憎しみの根源が谷にあると、まるでツインピークスのような悪の形を表現している。

 

歌詞は不信感と憎しみについて歌っているが、サウンド自体からは怒りや憎しみの感情を感じ取ることはできない。むしろ教訓めいた教条的な雰囲気が漂っている。そこにあるのは破壊と殺戮というカタルシスに酔うダークで甘美な世界。ハードコアの“躁”のうるささと激しさを感じない落ち着いたサウンドで、Brody King(ブロディ―・キング)のハスキーで艶やかな歌声に、クラシックミュージックのようなコーラス、映画の一幕を切り取ったイントロと破滅と絶望をザクザク刻む重いギターのリフからは、まるでエロティックなほど艶やかで、予見していた運命を受け入れるような破滅願望を感じさせるのだ。

 

死神をモチーフにしたTWITCHING TONGUES(トゥウィッチング・タングス)と、戦争という殺戮による神を憎む死のGOD’S HATE(ゴッズ・ヘイト)。死をモチーフにしている部分では、お互いに共通している。憎しみの根源は神にあると表現したGOD’S HATE(ゴッズ・ヘイト)は、悪こそが正義という逆説的な意味が込められている。まるで興奮の渦に引き込むようなヒール(悪役)のプロレスラーの劇場がそこにはあるのだ。