ロサンゼルス出身のパワーバイオレンス・バンドの2作目のEP。Bad Brains(バッド・ブレインズ)やCerebral Ballzy(セレブラル・ボールジー)、Trash talk (トラッシュ・トーク)などのバンドに続く、黒人ハードコア・バンド。
だが上記に挙げたバンドたちのすべてがニューヨーク出身(Bad Brains(バッド・レリジョン)はDC出身だがニューヨークで活躍)だが、Zulu(ズール)は西海岸出身のバンドだ。上記で挙げたバンドたちからの影響はあまりなく、パワーバイオレンスにメタルの重いリフと雪崩のようなブラストビートを合わせたサウンドで、つんざくようなノイズギターと甲高いシャウトと重くドスの効いた怒声のシンガロングするボーカルが特徴のバンドだ。
歌詞は、黒人社会の現状、アンデンティティ、レイシストへの抵抗など、虐げられたアフリカ系・アメリカンの現状を歌った社会派のバンドだ。ただ白人社会への怨嗟、人種差別への怒りなどを怒りや憎悪の感情は感じられない。このバンドの魅力は、神に感謝や、正しい行為をするなど、まるでマルコムXのような、アフリカ系アメリカンの誇りと戦う姿勢と道徳観にある。
レゲェ―やジャズなど偉大な黒人ミュージシャンたちのサンプリングを切り貼り、黒人カルチャーの素晴らしさを伝えている。その一方で黒人社会の悲惨でシリアスな現状を伝える演説のような声のコラージュがあり、心に痛みがダイレクトに伝わってくる部分がある。
黒人カルチャーへの偉大な経緯と誇りを掲げながら、プラックピープル、ブラックカルチャー、ブラックパワー、解放、自由などをモットーに挙げ、活動している。憎悪のみの感情に走らないところがすばらしいし、まさに黒人の偉大さを感じる作品なのだ。