人種差別やアメリカ黒人社会の悲惨な現状を訴え、レジスタンスな活動を貫いてきたSoul Glo(ソウル・グロー)。パンクレーベルの大手であるEpitaph Records(エピタフ・レコーズ)に移籍し、発売された4作目のフルアルバム。これが最高傑作と断言できるほど、充実した内容に仕上がっている。
Bad Brains(バッド・ブレンイズ)のような、激しくスピーディーでけたたましいハードコアをベースに、バラエティー豊かなギターフレーズやヒップホップ、ポスト・ハードコア的なギターを加え、ハードコアをさらに進化させてきた。アルバムを重ねるごとにエモーショナル・ハードコアなギターアレンジなどのことなるアプローチを加え、オリジナルティーあふれるサウンドを追求してきた。
その姿勢は今作でも貫かれている。Bad Brains(バッド・ブレンイズ)のような、激しくスピーディーでけたたましいハードコアをベースにしている根幹の部分は今作でも変わらない。シャーマンのような絶叫で、差別や憤りにあふれた理不尽な世の中へ向け、絶叫と煩悶を繰り返すボーカル。怒りや憤りといった感情を駆け抜けていく性急なスピードのドラム。The Jesus Lizard(ジーザス・リザード)やFugazi(フガジ)のように実験性を追求し、危機感や攻撃的な感情を煽るギター。終始、意識が感情のタガが吹き飛ぶようなテンションの高さと尋常でないスピード感で、勢いよく突き抜けていく。
今作では、フリージャズのようなホーンから、エラー音のようなデジタル・ノイズ、さらに扇情的になったギターフレーズ、ヒップホップ、レゲェなどの雑多な音色を、けたたましいスピードのサウンドと融合し、さらに進化したハードコアを展開している。
アルバムタイトルの『Diaspora Problems(ディアスポラの問題)』とは、バビロン捕囚後のユダヤ人の離散――離散して他国に住むユダヤ人が元になっている言葉で、ここでは黒人のルーツであるアフリカからの離散――離散して他国に住む黒人がテーマになっている。だからなのか、ヒップホップやレゲェ、スカ、Bad Brains(バッド・ブレンイズ)のハードコアなど、各国に散らばった黒人音楽を寄せ集め、けたたましさのなかに、怒りや憤りややるせなさといった感情が漂っている。まるで虐げられた黒人の鬱積した感情を集約したようなサウンドなのだ。
個人的には今作がSoul Glo(ソウル・グロー)の最高傑作だと思う。アメリカ社会の黒人の現状をリアルに歌った『THE NIGGA IN ME IS ME(ザ・ニガー・イン・ミー・イズ・ミー)』も素晴らしかったが、『Diaspora Problems(ディアスポラの問題)』は、間違いないハードコアの進化の最先端にいるサウンドだ。今年のベスト5に入ってくるほど、素晴らしい内容の作品なのだ。