Nuclear Power Trio(ニュークリア―・パワー・トリオ)
『Wet Ass Plutonium(ウエット・アス・プルトニウム)』

アメリカ元大統領のドナルド・トランプ、ロシア大統領のプーチン、北朝鮮総書記長の金正恩のマスクをかぶった3人組によるインストルメンタル・バンドの2作目。グラインド・コア・バンドCEPHALIC CARNAGE(セファリック・カーネイジ)のNick Schendzielos(ニック・シェンジエロス)がベースでロシア大統領のプーチンのお面をかぶり、ALLEGAEON(アリージョン)のGreg Burgess(グレッグ・バージェス)がギターで元アメリカ大統領のトランプのお面をかぶり、HAVOK(ハボック)のPete Webber(ピート・ウェーバー)がドラムで北朝鮮の書記長、金正恩のお面をかぶっている布陣。

だがシンプルだった前作とは違い、今作ではストリングスから、シュレッドハープ、シンセウェーヴリード、ホーンセクション、ピアノなどの多様な楽器を使用している。In Flames(イン・フレイムス)やMegadeth(メガデス)などで活躍しているChris Broderick(クリス・ブロデリック)、Scar Symmetry(スカー・シンメトリー)のBen Ellis(ベンジャミン・エリス)、Cephalic Carnage(セファリック・カーニッジ)のBrian Hopp (ブライアン・ホップ)、Fallujah(ファルージャ)のScott Carstairs(スコット・カーステアーズ) といったメンバーがゲスト参加したことによって圧倒的にバラエティーが広がった作品に仕上がったという。プログレのような幻想的な曲から、チャイナメロディーの曲、スパニッシュメロディーの曲、マイアミのリゾート気分と神秘的な雰囲気な曲、クラシックとジェント、ジャズ、フュージョンをつなぎ合わせた曲など、楽器だけでなく曲も多種多様な曲に仕上がっている。

そしてなによりすごいのは個々の楽器のテクニック。ファンクやスパニッシュの爪弾きを取り入れたベース、メタルのギターソロから軽快なアコースティック、ハープの爪弾き、ファンクやブルース、へとフレーズが変化していくギターフレージンク、速弾きと変則的なリズムの緩急で、相当な熟練のテクニックが無ければ弾けないフレーズばかりだ。

日本語で『濡れたお尻のプルトニウム』という意味のタイトルを付けた今作は、前作同様、世界平和を阻む危険な人物3人のお面をかぶり、ディスコのナイトフィーバーを催したパーティーで、おふざけで茶化している。プーチンに向けて、憎しみに満ちたくだらない戦争なんかやめて、喜びに満ちた楽しいことして人生をエンジョーイしようぜというメッセージが、皮肉に満ちた比喩のなかに込められた作品なのだ。