MAAFA(マーファ)
『Because We Are (ビコーズ・ウィー・アー)』

ニューヨークはブルックリン出身のハードコア・パンク・バンドのデビュー作。自らをアフロ・プログレッシブ・ハードコアと名乗っているバンドらしく、ハードコア・パンクとアフリカン・ディアスポラのリズムの融合した、新世代の新しいスタイルのハードコアを展開しているバンドだ。

このバンドもTURNSTILE(ターンスタイル)と同じく、いろいろなジャンルの音楽をハードコア・パンクに取り込んだサウンドを展開している。だがTURNSTILE(ターンスタイル)とは違い、ブラジルのアフォクセやサンバ、レゲエにアクセ、タンボール・デ・クリウラ、キューバのバタとトゥンバオ、西アフリカのサバール、アメリカン・ジャズとラテン・ジャズ、ワシントンD.C.のゴーゴーなどの世界中のアフロ・ミュージックを、SNAPCASE(スナップケース)からの影響が強い変則的なリズムのハードコアに取り込んでいる。

ハードコアの激しいギターに、ネオサイケの不吉で不気味なメロディーから、神秘的なインドのシタールのメロディー、ダブのリフ、闘争心を煽り立てるコンガやキューバのバタ・ドラム、西アフリカのジャンベなどの打楽器と合わさり、怒りと戦う気持ちが膨れ上がるエクスペリメンタルなハードコア。

そこにはブラック・ミュージックの奥深さや伝統と多様な音楽への敬意、ハードコアの怒りが合わさったアフロ・アメリカンの歴史、誇り、嘆き、迫害、反抗、闘争などの様々な感情が、何万年もかけて氷の中に閉じ込められた空気のように凝縮されている。

バンド名のMAAFA(マーファ)とは、スワヒリ語で “災害 “や “大惨事 “を意味し、奴隷貿易を含む奴隷制とホロコーストの問題を意味する言葉だ。黒人が抱える様々な問題を浮き彫りにし、そして権利を得るため戦いを挑んだバンドなのだ。

“Welfare (福祉)”では、奴隷制度がなくなった現在でも差別や貧困、劣悪な環境が残っていることを訴え、Deficit(赤字)”では、人種差別と同性愛嫌悪をする人々に対して怒りの言葉を述べている。“Blindspot (ブラインドスポット)”マッチョで男臭く暴力的で女性を排除する保守的な白人男性が支配するハードコアに対して批判を述べている。そこでは、黒人差別や、フェミニズム、女性蔑視の性被害、階級の不平等、白人至上主義へ、徹底的に糾弾し、戦いを挑んでいる。

そしてMAAFA(マーファ)がもうひとつ掲げている信念がハードコアの脱植民地化。ハードコアの脱植民地化とは、QTBIPOC(キューティーバイボック)の平等な権利主張と、ハードコア・シーンの解放。QTBIPOC(キューティーバイボック)とは、クィア、トランスジェンダー、黒人、先住民、有色人種の略。

ハードコアの脱植民地化とは、QTBIPOC の存在をハードコアシーンの中心に据え、QTBIPOCたちのリズム、QTBIPOCたちのダンス、QTBIPOCたちのスタイル、QTBIPOCたちの言語、QTBIPOCたちの土地、QTBIPOCたちの空間、QTBIPOCたちのシーンを、確立すること。ハードコア・シーンにいる黒人たちや、シーンに初めて参加する人たちに、黒人であることを決して否定してはいけないということを訴えかけている。すべての人々が平等であることを主張し、人々が繁栄できる公正な社会を構築するため、努力し戦い続ける必要があると訴えている。

黒人音楽への伝統継承と敬意、差別や白人至上主義に戦いを挑んでいくハードコアな姿勢。彼らしかないサウンド・スタイルと信念と主義を持ち持ち合わせ、いまどきの若者の感覚を持った、新世代のハードコアを代表するバンド。今年のハードコア作品とベスト3に入ってくるほど、素晴らしい作品だ。