BENT(ベント)
『Imaginal(イマジナル)』

マサチューセッツ州グリーンフィールド出身のメタルコア・バンドのデビュー作。Every Time I Die(エブリ・タイム・アイ・ダイ)やConverge(コンヴァージ)、Comeback Kid(カムバック・キッド)、Norma Jean(ノーマ・ジーン)、The Chariot(ザ・シャーロット)などのバンドたちから影響を受け、印象的なフレーズを切り貼りしたサウンドを展開。

Every Time I Die(エブリ・タイム・アイ・ダイ)の発展系といえるメタルコアで、野太くシンプルなハードコアをベースに、シンガロング・スタイルのボーカルと、気合の入った怒声が、金切り声のようなメロディーと荒々しいギターとぶつかり、激しくエキサイトしていく。ときおり変則的なリズムの裏側に鳴り響く静寂に満ちたメロディーが、精神的苦痛を和らげるようなやさしさに満ちている。終始激しくスピーディーでテンションの高いサウンドだが、ほんの静寂なメロディーが深い感情を紡ぎだしている。

歌詞は8年間の結婚生活を送った伴侶が、自殺で亡くなったことについて歌っている。そこで感じた、自分の存在やいままで生きてきたことが無意味と感じ、すべてを失ったと感じた喪失感。パンデミックによって隔離された世界に閉じ込められ、当たり前だったことが当たり前ではなくなったと感じた、崩壊がテーマになっている。

悲しみや痛み、無力感、喪失、崩壊のなかで、すべてがバラバラになり別のものに作り替えられる。土にかえり新たな生命として生まれ変わる。そこには希望はなく、すべての痛みや悲しみなどの感情を受け入れ、心に刻み新たな自分として生きていく。自分がいままで築き上げてきたものを壊し、新しく再構築する。そんな達観した思いがそこにはあるのだ。

嘆きや絶望に満ちた怒声からは、けっして解消されることのない絶望感と永遠の痛みがある。激しい悲しみと絶望感に満ちたサウンドのメタルコアはいままでなかった。そういった意味では次世代のメタルコアといえる作品なのだ。