BEATDOWN HARDCORE ビートダウン・ハードコアについて(ヨーロッパ編)

𝄃フランスのビートダウンハードコア

フランスのビートダウン・ハードコア・シーンは、隣国のベルギーとドイツからの影響が強い。とくにベルギーのNASTY(ナスティー)からの影響が強く、そこに最先端のヘヴィネスやフランス的な特異な美意識などを加え、ヨーロッパ・ビートダウン・ハードコアを進化させた。サウンド的には金属的なメタルの強度を追求したバンドと、ハードコアをごちゃまぜにした、2つのタイプに分かれる。タフガイ・アティテュードを掲げたバンドが少ないのもフランス・ビートダウン・ハードコア・シーンの特徴といえるだろう。戦争やサタニズムなどを掲げたバンドが多く、まるでノストラダムスの大予言のような終末観が漂っている。個人的にはそこにフランスならではの独特な感性を感じる。

PARJURE(パジュラ)


出典:Bandcamp
フランスで有名なビートダウンハードコア・バンドはPARJURE(パジュラ)。NASTY(ナスティー)の進化系で、2018年発表の『Who I Am(フー・アイ・アム)』では、ヨーロッパ的デカダンな要素に、デスメタルのリフ、シンガロング、ガテラルボイス、地獄のうめき声のようなボーカル、ハンマーで叩きつけるようなドラムなどを取り入れ、ブルータルなサウンドを展開している。最新作の『The Uncrowned King(ザ・アンクラウンド・キング)』では、魔界デジタルやドローンなどを取り込み、CODE OGENGE(コードオレンジ)のような進化を遂げた。ビートダウン・ハードコアの枠を超えた、最先端のヘヴィネスに呼応しているバンドでもある。
 

WORST DOUBT(ワースト・ダウト)


出典:Spotify
WORST DOUBT(ワースト・ダウト)は、Bulldoze(ブルドーズ)などのビートダウン・ハードコアより、Merauder(メラウダー)やKICKBACK(キックバック)や、ALL OUT WAR(オール・アウト・ウォー)に影響を受け、そこにテクニカルでメタリックなメロディーギターなどを取り入れ進化したバンド。タフガイ・アティテュードよりも、ALL OUT WAR(オール・アウト・ウォー)の影響のほうが強い。そこで歌われているのは戦争による憎しみや破壊、非情さ。戦争によって人を殺すことが平気になる“Dehumanized(非人間化)”や“Despise Death(死を軽蔑する)”、そして独裁者の欺瞞をうたった“Imposters Reign(詐欺師の支配)”、最後に核爆弾による“Extinction(絶滅)”など、世界の終わりを意識した歌詞で、アルマゲドンのような終末観が漂っている。戦争の怒りと恐怖をサウンドに閉じ込めたバンドなのだ。
 

ALEA JACTA EST(アーレア・ジャクタ・エスト)


出典:DUTCH METALMANIAC
ALEA JACTA EST(アーレア・ジャクタ・エスト)は、フランス、トゥールーズ出身のビートダウン・ハードコア・バンド。ザクザク刻むギターのリフから、熱く怒声をぶちまけるボーカル、ラップ調の歌い回し、Oiからは、メタルよりもハードコアからの影響が強い。Agnostic Front(アグノスティック・フロント)やSLAYER(スレイヤー)やMerauder(メラウダー)やa-Earth Crisis (アースクライシス)など、クロスオーバー・スラッシュやブラストビート、ニュースクール・ハードコアが、時系列を超えていろいろ入り混じったパリスストンプ系と呼ばれる独特な進化を遂げたバンド。
 

PALLASS(パラス)


出典:Discogs
PALLASS(パラス)はフランス、ボルドー出身のメタリック・ハードコア・バンド。このバンドもNASTY(ナスティー)をさらに激しく重くブルータルに進化したビートダウン・ハードコア・バンド。PARJURE(パジュラ)とギター・サウンドが似ている部分もあるが、掲げている信条があまりにも違う。そのバンドポリシーは、サタニズム。“Cursed From Birth(生まれながらの呪い)”、“Devils Tongue(悪魔の舌)”、“Angeli Cruentatur(天使は血を流している)”など、曲からは呪いや神への冒涜がある。ブルータルで鋼鉄の塊のように重厚なサウンドに、悪魔崇拝の歌詞。悪魔崇拝のロゴを掲げた、暴虐で重たくヘヴィなサウンドが特徴のバンドなのだ。