BEATDOWN HARDCORE ビートダウン・ハードコアについて(ヨーロッパ編)

ビートダウン・ハードコアは西欧の先進国だけでなく、ヨーロッパ各地に影響をあたえた。イタリアからメタルの聖地フィンランド、ノルウェイ、変わったところでは東欧のハンガリー、ロシアにいたるまで、幅広く拡散している。ここでは各国を代表するビートダウン・ハードコア・バンドを紹介したい。

𝄃イタリアのビートダウン・ハードコア

STILL IN DA GAME(スティル・イン・ダ・ゲーム)


出典:facebook
STILL IN DA GAME(スティル・イン・ダ・ゲーム)は、90年代のニューヨーク・ニュースクール・ハードコアから進化したビートダウン・ハードコアを展開。スピーディーで爆発力のあるサウンドに、にツインボーカルのラップとデス声の掛け合いや、Dog eat dog(ドッグ・イート・ドック)ニューメタルや、ブルータルデスメタルの要素を加え、オリジナルティーあふれるサウンドを展開している。かなりヒップホップ色の強いビートダウン・ハードコアで、マザーファッカーの叫び声が飛び交う歌詞が印象的なバンドだ。<まだ勝負は終わっていない>という意味のバンド名が示す通り、タフガイ・アティテュードを信望するバンドで、劣勢でもあきらめず立ち向かっていく姿が魅力のバンドなのだ。ビートダウン・ハードコアらしいカッコいいバンド。
 

𝄃オランダのビートダウン・ハードコア

BORN FROM PAIN(ボーン・フロム・ペイン)


出典:Discogs
BORN FROM PAIN(ボーン・フロム・ペイン)は、オランダを代表するハードコア・バンド。97年に結成し、現在まで8枚のアルバムを発表したベテランで、初期のころはAgnostic Front(アグノスティック・フロント)のようなオールドスクール・ハードコアに、Hatebreed (ヘイトブリード)のビートダウン・ハードコアを足したサウンドだった。アルバムを重ねるごとに、サザンロックやメタルコアな要素を取り入れ、より強度を増した、迫力あるハードコアを展開していた。日本語で痛みから生まれるというバンド名や『True Love(真実の愛)』と名付けられた今作では、“New Beginnings (新たな始まり)“や、“Glück Auf (幸運を祈る)”、“Rebirth(再生)”、“Unstoppable (止まらない)”といった曲では、変化を恐れず新しいことにチャレンジしていくことについて歌っている。まるでヘミングウェイの、「世界は素晴らしい、挑戦する価値のある場所」という名言を思い起こすよ。絶望を乗り越える希望と情熱と熱さにあふれたバンドなのだ。かなりカッコいい。
 

HAWSER(ホーサー)


出典:Bandcamp
HAWSER(ホーサー)は、オルタナティブ・プレスによってヨーロッパで最も興味深いハードコア・バンド15のうちの1つに選ばれたバンド。ビートダウン・ハードコアというより、CODE ORANGE(コードオレンジ)やJesus Piece(ジーザス・ピース)といったバンドたちと共通する最先端のモダン・ハードコア。妖しげなメロディーとモダン・ハードコアの融合が彼らの特徴だ。“Oorlogsmoe(戦争疲れ)”といった曲にあるように、歌われているのは戦争による疲弊しきった精神と感情。疲弊しきったダウナーな精神状態を音で表現している。CODE ORANGE(コードオレンジ)やJesus Piece(ジーザス・ピース)へのヨーロッパからの回答とでも呼ぶべきバンドなのだ。
 

MANU ARMATA(マヌ・アルマータ)


出典:IDIOTEQ
MANU ARMATA(マヌ・アルマータ)は、MADBALL(マッドボール)やDOWN TO NOTHING(ダウン・トゥ・ナッシング)、TERROR(テラー)に影響を受けた新世代のオールドスクール・ハードコア。シンガロング、Oiコーラス、ブレイクダウン、ユースクルーリバイバルなど、新世代のバンドらしい曲の組み合わせをしている。オランダのシーンのなかでは一番ニューヨーク系ハードコアらしいサウンドを展開しているバンド。逆流の川を進んでいくようなスピーディーで気合の入った熱い展開。“Self-Reliant(自立)“、“Remain Radical (急進的であり続ける)”、“Warrior Mentality(戦士の精神)”、“Strength Of Mind(心の強さ)“などの歌詞からは、己を鼓舞し、気合を注入し、立ち向かっていく気迫。ストレートエッジにも似たストイックな姿勢がある。熱いハードコア・スピリッツをもったバンドなのだ。
 

𝄃ノルウェイのビートダウン・ハードコア

LAST TO REMAIN(ラスト・トゥ・リメイン)


出典:Discogs
LAST TO REMAIN(ラスト・トゥ・リメイン)は、Hatebreed(ヘイトブリード)系のビートダウン・ハードコアから進化したバンド。そこにNasty(ナスティー)などのヨーロッパ・ビートダウン・ハードコアの要素を加え、より重厚に、よりメタリックに、より凶暴に進化した。“Suffocate on your Lies(嘘で窒息する)“や、“Our Time to Shine(私たちの輝く時)”、“Abhorrence(嫌悪)”、“No Justice Without Retribution(報復なくして正義なし)”などの歌詞からは、タフガイ・アティテュードへのこだわりを持ったバンドだということが理解できる。嘘をつき騙した裏切り者に対する報復する姿勢は、まさにギャング精神そのもの。
 

𝄃フィンランドのビートダウン・ハードコア

45 STAINLESS(45ステンレス)


出典:facebook
45 STAINLESS(45ステンレス)は、2018年に解散したが、Nasty(ナスティー)からの影響が強いヨーロッパ・ビートダウン・ハードコア・バンド。スローパートと重さにこだわり、メタリックの重厚なリフやグルーヴィーなビートダウン・パートに自動小銃の乾いた銃声を取り入れ、メタリック・ハードコアなサウンドが彼らの特徴だ。歌詞は“Hated(嫌われた)”や、“Endless(エンドレス)”、“Violence For Violence(暴力には暴力)”に、“At War(戦争中)”など、戦争にまつわる内容が多く、戦争の爆裂や怒りを閉じ込めたサウンドが、彼らの個性といえるだろう。ビートダウン・ハードコア特有のタフガイ・アティテュードに対してもこだわりを持ったバンドなのだ。

𝄃ハンガリーのビートダウン・ハードコア

THE LAST CHARGE(ザ・ラスト・チャンジ)


出典:facebook
ハンガリーはブタペスト出身のTHE LAST CHARGE(ザ・ラスト・チャンジ)は、HATEBREED(ヘイトブリード)系のスピーディーなハードコアと、NASTY(ナスティー)系のヨーロッパ・ビートダウン・ハードコアを合わせた亜種進化系。ドラキュラ伯爵の中世ヨーロッパをイメージさせるおどろしいコーラスに、ブルータルで重くヘヴィーなメタリック・ハードコアなサウンドを加え、独特な味わいを見せている。タフガイ・アティテュードよりもブルータルな要素が強く、“Gods Of War(戦争の神々)”や“The Ugly Truth(醜い真実)”という曲では、戦争の醜さや悲惨さを歌っている。また“B.P.H.C”ではブタペスト・ハードコアという、ブタペスト・ハードコア・シーンに対する誇りを歌っている。地元愛にあふれるバンドなのだ。

𝄃ブルガリアのビートダウン・ハードコア

REDOUND(リダウンド)

REDOUND
出典:Encyclopaedia Metal
REDOUND(リダウンド)は、NASTY(ナスティー)のヨーロッパ・ビートダウン・ハードコアから進化したバンドで、ツインボーカルが特徴の5ピースバンド。地の底でうねるようなデス声とハイトーンな絶叫がシンガロングするスタイルで、そこにピップ・ホップなサウンドや、メタリックなギター、ピッグスクイールなどを加え、彼ら独特の個性を確立した。デスメタル色が強く、モッシュピットやタフガイ・アティテュードに、吸血鬼などの悪魔主義を掲げているのも、彼らの特徴のひとつだ。

𝄃ベラルーシのビートダウン・ハードコア

TRY ONE’S LUCK(トライ・ワンズ・ラック)

Try One's Luck
出典:Bandcamp
ベラルーシはミンスク出身のTRY ONE’S LUCK(トライ・ワンズ・ラック) は、初期のころはブルドーズに影響を受けたアメリカンスタイルのビートダウン・ハードコアだったが、2作目では、メタリック・ハードコアやOiなどを取り入れ、よりノイジーに、より重厚なメタリックに、強固に進化した。“ Дай мне причину (理由を教えてください)”や“Никаких перспектив(見込みなし)”などの曲では、喧嘩や挑発などについて歌い、タフガイ・アティテュード全面に掲げている。まさにギャングで不良な精神を持ったビートダウン・ハードコア・バンド。