イタリア・ハードコア・シーンについて

そして82年にミラノで行われたイタリア全土から50のパンクバンドが集まったイベント。ブラッグ・フラッグの来伊。イタリアのハードコア・シーンは頂点を迎え、そしてドラッグが蔓延によって、徐々にシーンが衰退していく。RAW POWER(ロウ・パワー)はアメリカで1万人規模の観客を集めたライヴで演奏し、NEGAZIONE(ネガツィオーネ)はイタリアで2万から3万人規模のライヴを成功させた。どのバンドも目標を達成し、バンドを続けていくモチベーションを失ったと語っていた。そして、アナーキストな哲学を持ったバンドが出てこなくなり、世代交代が進まずシーンの活気が失われた。そして終焉を迎える。最後にRAF PUNK(ラフ・パンク)のHelena Velena(ヘレーナ・ヴェレーナ)がインタビューで語った“パンクは死んだ。死んだままにしましょう”という言葉が印象的だった。

 
イタリア・ハードコア・シーンとは、どのバンドもダイナマイトに火をつけ破裂するようなアッパーな爆発力があり、瞬間が過ぎ去ると、燃え尽き抜け殻になったような虚脱感を感じた。正直このDVDを見るまで、僕自身イタリアハードコア・シーンやバンドの知識はほとんどなかった。
 
このDVDを見て感じたのは、日本人がイメージするイタリア人とは、真逆な人たちであることが印象に残った。イタリア人とは、すぐに女性を口説き、アルマーニに代表されるようにファッションセンスがよくお洒落、派手で陽気で明るいという印象があったが、ここに登場するイタリア人は、無表情で、地味でイメージとは真逆な人たちばかりだった。しかもセックス・ピストルズのような派手な格好のバンドは少なく、クラスのような黒服で地味な格好のバンドが多かった。イタリアにはアメリカやイギリスのように、そのバンドにしかない特殊な個性を持ったバンドはいない。だが、どのバンドもノイジーで録音状態の音の悪さを、逆に芸術の域まで高められる作品のクオリティー高さには驚かされた。それがイタリア・ハードコアの素晴らしさであり、イタリア・ハードコア・シーン全体の魅力なのだ。