ここでは2017年に上映され、17年にDVD化された『New York Hardcore Chronicles Film(ニューヨーク・ハードコア・クロニクルズ・フィルム)』を中心にニューヨーク・ハードコアについて紹介したい。このDVDは、ボストン・ハードコアの映画「xxx All Ages xxx The Boston Hardcore Film(オール・エイジズ・ボストン・ハードコア・フィルム)」を手掛けたDrew Stone(ドリュー・ストーン)監督によって制作され、16年に上映された。ワシントンDCのハードコア・シーンにスポットを当てたSALAD DAYS(サラダ・デイズ)や、ボストン・ハードコア・シーンのオールエイジと並び、アメリカ一地域のハードコア・シーンを紹介した内容。今回はニューヨーク・ハードコアに焦点を当てている。
ニューヨーク・ハードコアといえばTony Retteman(トニー・レットマン)著書の『NYHC:New York Hardcore 1980-1990(ニューヨークハードコア 1980-1990)』や、Frank Pavich(フランク・パヴィッチ)監督の『N.Y.H.C. (film)』などの作品がリリースされ、語りつくされた印象があった。だがこのDVDでは、ニューヨークハードコアの歴史だけでなく、敵対する音楽シーンや、ニューヨークのアートやカルチャーからの側面からの特徴と合わせて収録。ニューヨークという風土や街全体からハードコア・シーンをとらえた内容で、新たな発見があるDVDだ。
このDVDでは、10章に分けてニューヨーク・ハードコアについて語っている。とくに印象に残った項目だけを挙げていくと、Agnostic Front (アグノスティック・フロント)やMurphy’s Law (マーフィーズ・ロー)などが出演し、ニューヨーク・ハードコアが生まれた伝説のライヴ・ハウスA7について。
出典:Flaming Pablum
6千枚ものニューヨーク・ハードコアの写真を撮り続けたPandall Underwood(・アンダーウッド)について。MAKE JUDGE(マイク・ジャッジ)が初めてボーカルを撮った写真や、MADBALL(マッド・ボール)のFreddy Cricien (フレディ・クリシアン)が7歳の時アグノスティック・フロントのライヴでボーカルをした写真など、貴重な写真を撮り続けた人物なのだ。
出典:Freddy Cricien Young
ニューヨークの地下鉄の落書き。落書きがニューヨークの治安を悪くしていると、世間では認知されていた。だがその反面、スプレーで落書きされたロゴは、フィリーロゴと呼ばれ、ニューヨークならではの独特なデザインを生んだ。ハードコア、メタル、ヒップホップなどのストリートカルチャーと密接に結びついた。現在ではアメリカを代表するデザインのひとつとして知られている。
出典:カラパイア
ハードコアとメタルとのクロスオーバー。クロスオーバー自体はD.R.IやSuicidal Tendencies(スイサイダル・テンデシーズ)、C.O.Cなどのバンドが早かったが、ニューヨークで花開いた音楽ジャンルだった。その理由は、大都会ゆえの地方出身者や物資や情報が多く集まり、ハードコアに柔軟に取り入れ、新しいサウンドを提示できる環境にあったからだ。クロスオーバーの精神はその後ラップとも交配し、さらに独特なスタイルを生んだ。バンドもアグノスティック・フロントやクロ・マグスから始まり、Biohazard (バイオハザード)やマッドボール、Hatebreed (ヘイトブリード)を経て、現在、CANDIRIA (キャンデリア)などの2ndウエーブと呼ばれるクロスオーバー・バンドに精神は受け継がれていく。
出典:aversionline.com