Washington,DC HardcoreワシントンDCハードコア・シーンについて(1980-1990)

そしてFire Party(ファイヤー・パーティー)という女性バンドらによって設立されたPOSITIVE FORCE(ポシティヴ・フォース(正しい力の目覚め))と名付けられた新しい芸術家運動。自らの成長が目的とされ、社会変革や非暴力などを訴え、芸術や教育、慈善運動などに力を入れた活動。
ポジティヴ・フォース
出典:CROSS FIRE

 
その後のハードコア・シーン大幅に変えたホスト・ハードコアと呼ばれたFugazi(フガジ)の結成。
フガジ
出典:COS

最後にフガジがNirvana(ニルヴァーナー)に与えた影響について語り、JAWBOX(ジョーボックス)などの新しいバンドの台頭、J. Robbins(J・ロビンス)とDave Grohl(デイヴ・グロール)がDCシーンにつて総括するところで映画は終わる。10年間に起こった出来事を、時系列に沿って、DCシーンの変遷をインタビューとライブ映像を交えて進めていく内容だ。

DCシーンを大雑把に説明すると、初期のころは、どのバンドもバッド・ブレインズからの影響を抜けきれずにいた。それが85年に起きた“レボリューション・サマー”で、サウンド面が刷新されオリジナルティーを獲得することになる。そして“ポジティブ・フォース”で、DCシーンそのものが独自アイデンティティを持ち、個々にいろんなサウンド形態を持ったバンドを次々と輩出していくようになる。

個人的には、フガジのあとにMinor Threat(マイナー・スレット)を聴いたり、そのあとにダグ・ナスティーを聴いたりしていたから、シーンのそのものの時系列での移り変わりを知らなかった。それが今回のDVDでDCの全容すべてを知ることができた。資料としてもものすごく基調価値のある内容だ。

感想をいえば、DCハードコアとは、ものすごく理想的で素晴らしいシーンだと思った。ドラッグが蔓延することもなければ、黒人や白人、アジアや男女差別のない、DCに住んでいることという以外、すべてに対して、門戸を開いた特殊なシーンだった。そこにはまるで隣近所がすべて知り合いで、お互いに助け合った昭和時代のような、義理と人情にあふれた昔の日本の下町のような情緒を感じる。その遠因としてディスコード・レコーズのオーナーである、イアン・マッケイの性格が大きく左右しているのだろう。

このDVDでは語られていなかったが、一点疑問に思ったのが、ディスコード・レコーズがDCのバンド以外リリースしなかったところ。もちろんDC以外のバンドをリリースしていたら、これほどDCシーンは、大きく発展しなかっただろう。DC以外に門戸を開かなかったのが、すごくいい意味で作用したの。ただイアン・マッケイにどんなポリシーがあったのか、個人的には知りたかった。そこだけが残念だった。(英語が分からなかったので、もしかしたら語っていたのかもしれないが)

なおボーナストラックに本編からカットされたインタビューと、当時のDCバンドのライブ映像が、収録されている。