Washington,DC HardcoreワシントンDCハードコア・シーンについて(1980-1990)

ここでは2014年12月に上映されたワシントンDCのパンク・ハードコア・シーンに焦点を当てたドキュメンタリー映画『SALAD DAYS:A Decade Of Punk In Washington,DC(1980-1990)』(サラダ・デイズ:ア・デケイド・オブ・パンク・イン・ワシントンDC(1980-1990))を中心に、ワシントンDCのハードコア・シーンについて語っていく。

07年に上映されたドキュメンタリー映画『アメリカン・ハードコア』は、80年から86年にかけてのアメリカ全土のハードコア・シーンを、相関的に紹介した映画だった。今回紹介する映画『サラダ・デイズ:ア・デケイド・オブ・パンク・イン・ワシントンDC(1980-1990)』は、80年から90年にかけてのワシントンDCのパンク・ハードコア・シーンのみに焦点を当て、10年に起こった出来事を紹介する作品だ。トニー・レットマン著書の『New York Hardcore1980-1990(ニューヨーク・ハードコア1980-1990)』は、ニューヨーク・ハードコア・シーンの10年間の出来事を事細かく追った紹介した本だったが、そのワシントンDC版といえる内容だ。この2作品を比べると、ニューヨークとワシントンDCでは、まるで別の国の出来事のように、シーンの内容が全く違うのが面白い。

本編では、Ian MacKaye(イアン・マッケイ)とDC出身であるHenry Rollins(ヘンリー・ロリンズ)が影響を受けたRamones(ラモーンズ)やSid Vicious(シド・ヴィシャス)などの初期パンク・バンドの話から始まる。そしてイアン・マッケイが初めて結成したバンド、The Teen Idles(ティーン・アイドル)の話に移り、レコードをリリースするためDischord Records(ディスコード・レコーズ)を設立した経緯を説明する。
ディスコード・レコーズ
出典:KEXP

YOUTH BRIGADE(ユース・ブリケード)やVoid(ヴォイド)、The Faith(ザ・フェイス)、SOAなど、Bad Brains(バッド・ブレインズ)に影響を受けたバンドたちの台頭により、ワシントンDCはディスコード・レコーズを中心に、ハードコア・シーンが活気を増していく。
ユースブリケイド
出典:Dischord Records

そしてMINOR THREAT(マイナー・スレット)が81年に発表したEP『MINOR THREAT』のなかの“Straight Edge (ストレート・エッジ)”と、同年発表のEP『In My Eyes』のなかの“Out Of Step (アウト・オブ・ステップ)”との2曲から、ストレートエッジに対する思想とアティテュードが生まれる。“Don’t smoke Don’t drink Don’t fuck”<俺はタバコを吸わない、酒も飲まない、ファックもしない>と歌い、この歌詞によって、ストレート・エッジ思想が確立された。

出典:ROUCH TRADE

警察介入や暴力の蔓延などによるDCシーンの倦怠期。スキンズの台頭。

倦怠期を迎えていたDCシーンに、Rites of Spring(ライツ・オブ・スプリング)やEmbrace(エムブレイス)、Dag Nasty(ダグ・ナスティー)など新しいバンドたちの登場によって、新たなルネサンス運動を起こした85年のレボリューション・サマー(改革の夏)。レボリューション・サマーにより、DCシーンはエモーショナル・ハードコアにシフトチェンジしていく。
ライツ・オブ・スプリング
出典:Dischord Records