アルバムレビュー

Destiny Bond (デストニー・ボンド)
『Be My Vengeance(ビー・マイ・ヴェンジャンス)』

コロラド州デンバー出身のハードコア・バンドのデビューアルバム。Dag Nasty(ダグナスティ―)とFaith(フェイス)が融合したようなメロディックなギターを取り入れたハードコアで、The Hives (ザ・ハイヴス)のように反復するギターのリフが印象的。

苛立ちを吐き捨てるようなボーカルが、焦燥感に満ちた性急なスピードでぐいぐい進んでいく展開。歌詞は“Chew”では自分たちには権利があり、公平であるかのように振舞っている世の中の欺瞞についてと歌い、“Losin’”では「無駄な人生ではない、立ち上げれと喚起している。

古典的なハードコア/パンクなサウンドで目新しさこそないが、むしゃくしゃした苛立ちを吐き捨てる簡潔なスタイルは、潔いほど好感の持てるサウンドだ。

Cosmic Joke (コスミック・ジョーク)

ロサンゼルス出身のハードコア・バンドのデビューアルバム。Descendents (ディセンデンツ)やMinor Threat(マイナースレッド)やAdolescents (アドレセンツ)を融合し激しくしたようなメロディックよりのハードコアで、自らが抱えてる劣等感や社会問題を、自暴自棄になっているような歌い方で叫んでいく。

歌詞は、保守とリベラルに完璧に分断されたアメリカ社会を歌った“Tempered Expectations(テンプレッド・Tempered Expectations)”から、お金や新しい車、新しいギターなど、消費社会をバカにした“Hedonic Treadmill(ハーメティック・トレッドミル)”などについて歌い、冷めた視線で、自分がどこにも属さないアウトロー的な、主流派とは距離を置いている姿勢がある。

80年代の西海岸のバンドに多かった、シンプルなパンクをベースにしたハードコアで、中産階級のコンプレックスと怒りを叩きつけサウンド。そのサウンド・スタイルに、強烈なリズムを加え、現在にブラシュアップして甦らせたバンドなのだ。

BIG BOY(ビッグ・ボーイ)
『SPRING PROMO 2023(スプリング・プロモ 2023)』

カルフォルニア州はサンノゼ出身の新世代ハードコア・バンドのデビューEP。Sunami(スナミ)や Eightfold Path(エイトフォールド・パス)のメンバーによって結成されたバンドで、ミドルテンポのグルーヴィーなハードコアを展開している。

Sunami(スナミ)のように変則的なリズムのなかに複雑なフレーズを散りばめたバンドで、失恋から、孤独、疑心暗鬼など、あらゆる愛の形を歌っている。

ニュースクール・ハードコアのグルーヴィーなギターから、バッファーロ―ハードコアのスタイル、サンプリング、ビートダウン・ハードコアまで、あらゆるエッセンスをぶち込んだハードコアは、まさに新世代の新しいスタイルのハードコア。これからのハードコア界を担っていくだろう新鮮さにあふれた作品。