For Those Who Have Heart (W/Dvd) (Reis) A Day To Remember Victory Records 2008-02-18 |
07年に発表された2作目。メタルコアのメロディック化という個性を確立したのはこの作品から。基本路線であるスクリーモやメタルコアに、メロディック・パンクを加えたサウンドに変わりはない。今作ではメロディー側にメロディック・パンクからの影響がさらに強くなり、よりポップで聴きやすいサウンドに深化した。映画音楽からの影響こそ薄れたが、メタルコアのポップ化がさらに進んでいる。
今作ではメタルコアのポップ・パンク化という彼らの個性が遺憾なく発揮されている。たとえば“スピーク・オブ・ザ・デビル”では、スピーディーで爽やかなメロディック・パンクに地獄のうめき声のようなデス声が絡む展開で、疾走感のなかに切なさが漂い、デス声とともに切ない感情が行き場のない怒りへと変わっていく。“モニュメント”では、ジミー・イート・ワールドのような野太いギターとキラキラメロディーを中心に、そこにデスメタルのデス声や重いリフ、メロディック・パンクの青春コーラスが絡み、明るさや、暗さ、純粋さがめまぐるしく変わる展開で、まさに情緒不安定を表しているような混沌がある。
いままでニュー・スクール・ハードコアやスクリーモ、絶叫や怒声にメロディーを取り入れたバンドは数多くいた。だから厳密な意味で言えば彼らは先駆者ではない。だがそのバンドたちと違い、ア・ディ・トゥ・リメンバーが、この作品で2万部を売り上げ、人気が出た理由は、そのサウンドに引き込まれるような聴きやすさにある。
彼らのメロディーは透明で爽やかではあるが、総じてシリアスで切なく憂鬱で暗い。そして性急に疾走していく切ないメロディーと怒りの感情を叩きつけるデス声と重厚なリフとの融合には、切なさから前へ突き進むような熱い感情へと変わる瞬間を表現している。サビの部分がヘヴィーに変わっても、メロディーがしっかりしているから、不快さは残らない。むしろヘヴィーな部分が、心の深い感情を表現してさえいる。それが彼らが魅力であり、人気の理由なのだ。
彼らのサウンドは、ハードコアにメロディーを載せたバッド・レリジョンに発想が近い。ぼくは彼らの才能をかなり評価している。
なお08年に発売された再リリース盤には、DVDと、デビュー作の“ハートレス”と“ユー・ショウド・ハブ・キルド~”が再録され、ケリー・クラークソンのカヴァー“シンス・U・ビー・ゴーン”と“ホワイ・ウォーク・オン・ウォーター~”の2曲の追加ボーナス・トラックが加えられた。商売目的に発表されたこの作品が、のちにヴィクトリー・レコーズと遺恨を残すきっかけとなるわけだが。