Pyrrhon(ピーロン)
『Abscess Time(アブセス・タイム)』

ニューヨーク出身のテクニカル・デスメタル・バンドの4作目。テクニカル・デスメタルとは、デスメタルを中心に、70年代のプログレやフリージャズやマスコアなど、最先端のヘヴィーロックな要素を詰め込み、テクニカルで実験的なサウンドなのだ。

 

マスコアの要素をぶち込み、自身のスタイルを確立した“The Mother of Virtues(ザ・マザー・オブ・バトゥルズ)”。アンセインのようなジャンクやインダストリアルな要素を詰め込み、ブルータルデス・メタルのようなけたたましいドラミングが印象的な“What Passes For Survival(ワット・パセス・フォー・サバイバル)”。そして今作では、Today is the Day (トゥディ・イズ・ザ・ディ)のようなアヴァンギャルド・メタルな要素をぶち込んだ。

 

ヒステリックで甲高い叫び声とノイズが中心だったToday is the Day (トゥディ・イズ・ザ・ディ)と比べると、Pyrrhon(ピーロン)はもっとヘヴィーで重く、ノイズや効果音など装飾を排除した骨太なサウンドを展開している。嵐のなかを立ち向かっていく激しく怒声が入り混じった叫び声。激しすぎて音がゆがんでいくエクスペリメンタルなギター。極限まで響く高音がリヴァーヴしていく。すべてがハイテンションで、下水道ボーカルにブラスト・ビートなど、マッドであらゆる暴虐な要素を詰め込んでいる。

 

歌詞には、お金がすべての経済物質主義への批判などを歌詞が並ぶが、怒りと負の要素にまみれたおどろおどろしいサウンドの情感を言葉に表している。まるで地獄の業火に焼かれているような暗く重く暴虐なサウンド。CODE ORANGE(コードオレンジ)とは異なる方向性だが、Pyrrhon(ピーロン)もまた、エクスペリメンタルで最先端のヘヴィネスを提示したバンドなのだ。