Satanic Planet (サタニック・プラネット)

平等主義と社会正義に宗教と政治の分離という3つの理念を掲げる、悪魔主義の宗教団体Satanic Temple(サタニック・テンプル)。その創設者のひとりであるLucien Greaves(ルシアン・グリーブス)を中心に、Locust(ロカスト)、 Dead Cross(デッドクロス)、 Swing Kids(スウィング・キッズ)、 Deaf Club(ダフ・クラブ)などのバンドで活動したJustin Pearson (ジャスティン・ピアソン)、Slayer(スレイヤー)、Misfits(ミスフィッツ)、Suicidal Tendencies(スイサイダル・テンデンシーズ)、Dead Cross(デッド・クロス)の元メンバーのDave Lombardo(デイヴ・ロンバード)、Planet B(プラネットB)、Sonido de la Frontera(サンディオ・デ・ラ・フロンターラ)などで活動していたLuke Henshaw(ルーク・ヘンショー)の4人で結成されたSatanic Planet (サタニック・プラネット)のデビュー作。

 

元Slayer(スレイヤー)や元Locust(ロカスト)など、激しくヘヴィーなバンドで活躍していたメンバーで結成されたバンドだけに、激しいロックなサウンドをイメージしていたが、ここでは魔界アンビエントとでも呼ぶべき、不穏なデジタル・サウンドを展開している。

 

環境音楽の悪魔ヴァージョン、魔界アンビエントとでも呼ぶべきか、まるで悪魔を召喚しているような呪術的サウンド。魔法陣の前で呪文を唱えているようなコーラス、ホラー映画にでてくる憑依された悪魔の声ボーカル、トライバルなドラム、不吉さと不穏な空気に満ちた静かで低いうねりのデジタル音。それらの音が混然一体となって、地の底から不吉な塊が湧き上がらせるような邪悪なサウンドを作り出している。

 

そこにはまるで人間に悪魔が憑依して、デビルマンが誕生するような邪悪に満ちたトランス状態がある。まさに悪魔宗教と呼べるサウンドだ。

 

だが彼らが悪魔宗教を信仰する理由には、逆説的な意味がある。そこに込められたメッセージとは、アメリカ国内で信じられている疑似科学と呼ばれるスードウサイエンスの恐ろしさや、政治批判、支配的で組織化された大規模な宗教の偽善を暴くため、あえて悪魔という邪悪な思想を全面に打ち出しているそうだ。

 

フロントマンであるLucien Greaves(ルシアン・グリーブス)は、悪魔主義を打ち立てているため、多くの殺害脅迫を受け、家族への脅迫を避けるため、実名を名乗っていないそうだ。それほど危険な目に合いながらも、自分の意思を貫く姿勢。ものすごく反社会的でひねくれながらも、恐ろしいほどパンク・アティテュードを貫いているバンドなのだ。