テキサス州はオースティン出身のハードコア・バンドの2作目。テキサスといえば、ケネディーが暗殺された都市のダラスが有名で、保守層がかなり強い土地柄だ。市民を押さえつける警官権力もハンパでなく強く、警官の射殺事件が多い土地としても知られている。その反動なのか、テキサス州のなかでも比較的リベラル色の強い都市であるオースティンは、アメリカの負の部分を集約したButthole Surfers (バッドホール・サーファーズ)から、反体制的なM.D.C、トランスジェンダーのBIG BOYS (ビック・ボーイズ)など、反体制的や反社会的なバンドが多く排出される土地として知られている。Drip-Fed(ドリップ-フェッド)も、そんなテキサスの伝統を受け継ぐバンドなのだ。
彼らの歌詞には、“Texas/Hate(テキサスの憎しみ)”や“Live and Die in the City(街で生きるか死ぬ)”といった内容が目立ち、キリスト原理主義者や保守層に支配されたテキサスを、憎しみを込めて攻撃的に批判している。
初期パンク色の強いハードコア・パンクのデビュー作から、ハードコア・パンクにギターアレンジを取り入れ、よりブラッシュアップした進化を遂げてきた-Drip-Fed(ドリップ-フェッド)。
そして今作では、よりメロディックに、さらにギターアレンジにこだわったサウンドを展開している。初期パンクのような扇情的なギターから、アグレッシブで重いギターのリフ、繊細で陰りのあるメロディーにいたるまで、まるでプラモデルの制作のように精密で、緻密に計算されたギターフレーズをふんだんに盛り込んだサウンドを展開している。
ハードコアの進化というより、初期パンクをさらに進化・発展させたサウンドで、Drip-Fed(ドリップ-フェッド)のオリジナルティーあふれるサウンドスタイルを、確立した作品。そのサウンドは激しくアグレッシブながらも、メロディックで軽やかで艶やかさなどの繊細さで満ちている。カオティックなパンクとでも呼ぶべきサウンドなのだ。
そのサウンド・スタイルは、どこかTouché Amoré(トゥーシェアモーレ)を彷彿とさせる。エモーショナル・ハードコアから進化したTouché Amoré(トゥーシェアモーレ)とは、別方向から進化したサウンドともいえるだろう。若干リズム感が悪い部分が見受けられるが、この作品も昨年のベスト10に入るほど、素晴らしい内容の作品だ。