ミネアポリス出身のニュースクール系メタリック・ハードコア・バンドのデビュー作。ドスの効いたボーカルと、ハンマーのように重厚なギターとマッドなリフが特徴のメタリック・ハードコアのシングル『Wanderer(ワンダラーズ)』。NAILS(ネイルズ)のようなノイズ系ハードコアに変貌を遂げ、よりアグレッシヴにより攻撃的に進化を遂げたEP『Gloom Daze(グルーム・デイズ)』。メタリック・ハードコアのマッドなリフにノイズ系ハードコアという、両者の良い部分を融合し補完した2作目のEP『Abandoned(アバンドンド)』。そして今作ではマスコアな要素を加えさらに進化を遂げている。
ボーカルは地獄の怨霊のようなデスボイスに変わり、サウンドは前作よりもシンプルでノイジーに変化。全体的にミドルテンポな曲が多く、マッドでヘヴィーで重い。単調なコード進行を繰り返し、そこに跳ね返るようなリフを加えることによって、頭のネジが外れたような独特な不協和音を生み出している。FULL OF HELL(フル・オブ・ヘル)のサウンドフォーマットに、メタルの重厚さとノイジーなリフを上乗せし、まるで地獄の奥底をイメージさせる阿鼻叫喚なサウンドなのだ。
腐った肉体で結ばれた~滴る血に描かれた美しい絵という“Decay(腐敗)”の歌詞からは、悪魔絵図を見て感じる特異な美意識や、ブルータルな要素を感じる。悪魔主義と血糊などの残虐性が入り混じった要素が彼らの個性といえるだろう。
今現在、ヘヴィーなサウンドの最前線にいるバンドのひとつがFULL OF HELL(フル・オブ・ヘル)だ。そのFULL OF HELL(フル・オブ・ヘル)のサウンドから、進化しさらに発展させようとしているのが、Wanderer(ワンダラー)なのだ。いまいちFULL OF HELL(フル・オブ・ヘル)の影響下から抜け切れていない部分もあるが、彼らも新しいメタルを追求しているバンドに間違いはなのだ。