オレゴン出身のハードコア・バンドのデビュー作。このバンドも独特で音楽ジャンルを形容するのが難しいが、メロディック・ハードコアからエモーショナルハードコア、ニューヨーク・オールドスクール・ハードコアにHR/HMメタルなど、幅広くミックスしたサウンドを展開している。しかも独特な混ざり方をしている。
Knelt Before(ネルト ビフォア)は、教師から消防士などの社会貢献をモットーとしている職業のメンバーで構成され、モラリストで道義に反することを嫌い、ストレートエッジやPMA(ポジティヴ・メンタル・アティテュード)を信条に掲げている。
単音を無限ループのように繰り返し弾くベース、暗雲から光が立ち込めるようなメロディー、呪詛を洗い流すような叙情的なギターソロ。テクニカルで、フレーズ一つとってみても、いろいろな音楽からアウトプットしているのが理解できる。だが変化球のように奇を衒った混ざり方をしているため、○○からの影響とかを感じさせない独特なサウンドに変貌している。
このバンドの特徴はシンガロング・スタイルのボーカルの独特さにある。まるで応援団のような気合の入った怒声。そこには頑張れ、踏ん張れとエールを送っているかのような気合を感じる怒声だ。気合とガッツの注入がパンクの爆発的なパワーと混ざり、悩みや苦難という暗闇から爆発力で抜け出すような、ポジティヴなパワーに満ちている。
10曲目の日本語で歌われている“生きるしかない”では、<間違っているかもって迷うこともあるけど、自分を信じろ。>と歌っている。そこには困難という壁にぶつかり、上手くいかないことがあっても、信念を貫く姿勢がある。後先のことを何も考えないノー天気なPMAとは違い、困難を受け入れ夢に向かって立ち向かっていく不屈の精神で熱い魂のPMAなのだ。
サウンド的にもオリジテルティーがあり、困難を理解し立ち向かっていく姿勢がすばらしい。個人的にはかなり好きなバンド。