Rancid(ランシド)
『Tomorrow Never Comes(トゥモロー・ネバー・カムズ)』

90年代のメロディック・パンクを代表するバンドのひとつRANCID(ランシド)の6年ぶりとなる10作目。まさに初期アメリカン・パンクといったシンプルなサウンドに仕上がっている。

RANCID(ランシド)のサウンドとは、ハードコアなアルバムだった『Let’s Go(レッツ・ゴー)』や、『RANCID V(ランシドV)』、『Trouble Maker(トラブルメーカー)』。メロディックパンクとスカコアを合わせたアルバムの『…And Out Come The Wolves(…アンド・アウト・カム・ジ・ウルブス)』や『Indestructible(インデストラクティブル)』、『Let The Dominoes Fall(レット・ザ・ドミノズ・フォール)』。レゲェアルバムの『Life Won’t Wait(ライフ・ウォウント・ウェイト)』など、時代によって微妙に変化してきた。だが『Indestructible(インデストラクティブル)』では、重苦しい悲しみと重圧のような感情が漂っていたし、『Let The Dominoes Fall(レット・ザ・ドミノズ・フォール)』では、才能が枯れてしまったような枯渇した感情を感じた。メロディックパンクとスカコアを合わせたアルバムでも、カラッと明るく爽やかな気持ちになれなかった作品もあったし、逆にハードコアの過激な音を追求した作品でも、カラッと明るく爽やかな気持ちを感じる作品もあった。『Let’s Go(レッツ・ゴー)』の“RADIO RADIO RADIO(レディオ・レディオ・レディオ)”や、『…And Out Come The Wolves(…アンド・アウト・カム・ジ・ウルブス)』、『RANCID V(ランシドV)』などの作品に漂っていた、カラッと明るく爽やかな気持ちこそ、RANCID(ランシド)の本質的な魅力なのだ。

今作ではカラッと明るく爽やかなRANCID(ランシド)が戻ってきた。“It’s a Road to Righteousness(それは正義への道)”では、信念を貫くことが正義の道と説き、“New American(新しいアメリカ人)”では、自分がニュータイプのアメリカ人で、批判されようが我が道を貫くと歌っている。そこには悩みや悲しみや迷いが吹っ切れ、開き直ったたようなカラッとした明るさがある。

RANCID(ランシド)のメンバーも現在50代に突入し、残された人生も短くなってきた。だったら過去の栄光にしがみついたり、悲しみや後悔にくよくよしてもしょうがない。失敗しても残りの人生とことん楽しんでやるといった開き直った感情が、この作品には刻み込まれている。まさに爽やかな風のように清々しい気持ちになれる作品なのだ。