Bulldoze(ブルドーズ)
『The Final Beatdown (ザ・ファイナル・ビートダウン)』

ビートダウン・ハードコアというジャンルを創った伝説のバンド、Bulldoze(ブルドーズ)の96年に発表された唯一の作品。ハードコアの歴史に残る名盤が、この度Triple B Records(トリプル B レコーズ)からボーナストラックを加え、1000枚限定で発売。

このレビューで取り上げているBulldoze(ブルドーズ)の96年に発表された『The Final Beatdown (ザ・ファイナル・ビートダウン)』は、このアルバム・タイトルが、ビートダウン・ハードコアの名前の由来となった。ニューヨーク・ハードコアをベースに、ダウンチューニングされたギターや、ヘヴィなブレイクダウンのドラムを融合したサウンド。収監経験のあるギャングの心境を歌った歌詞。裏切り者は容赦しない暴力的で緊迫感に満ちたギャング・アティテュード。まさに不良のためのハードコアなのだ。

『The Final Beatdown (ザ・ファイナル・ビートダウン)』は、CRO-MAGS(クロマグス)やBREAKDOWN(ブレイクダウン)に影響を受けたニューヨーク・ハードコアをベースに、重くシリアスなギターのリフ、ブレイクダウンするドラム、ヒップホップ気味の怒声ボーカルが特徴のサウンドだ。ハードコアの場合、激しくスピーディーなサウンドに、観客はそのスピードに合わせた合わせモッシュピット・ダンスをする。この作品では、ブレイクダウンやスローなリズムをハードコアに融合している。スローテンポでじっくり聴かせるサウンドにすることによって、重さ一つ一つを刻むヘッドバンキングのダンスのような、攻撃性を獲得した。

“OUR WAY(アワー・ウェイ)”では、<正義はない。法も守らない。奴らは俺たちを締め出し、裏切った。>と歌い、“RESPECT THROUGH FEAR(リスペクト・スルー・フィアー)”では<俺の尊敬のすべてを奪い、お前の心に恐怖を植え付ける。憎しみが俺を支配した。>と歌っている。そこには、恐怖と暴力で人を支配するギャングの秩序や上下関係など、ギャング世界のリアルな日常と、裏切りへの報復や屈辱に耐える怒りと憎しみに満ちた内容の歌詞がある。激しく重くヘヴィーにダウンチューニングされたギターでブレイクダウンやスローなリズムでじっくり聴かせ、ギャングのような暴力性で暴れるサウンド。それがビートダウン・ハードコアなのだ。

刑務所に入るなどギャングそのものの破天荒だったボーカルのKEVONE(ゲビンワン)は、2022年9月に他界した。その不良性に満ちたアティテュードは、現在ハードコア・シーンで、ヴィーガン・ストレートエッジ・ハードコアと二分するほど、ビートダウン・ハードコアは人気を獲得している。ギャングに憧れる不良たちに門徒を開き、傷だらけの天使のように新しい一時代を作ったバンド。ハードコア界の歴史的な名盤のひとつだ。