BEATDOWN HARDCORE ビートダウン・ハードコアについて

隆盛期(2000年代後半から2010年代前半)

Terror(テラー)

テラー
出典:facebook
2000年も中頃に入るとビートダウン・ハードコアは、Terror(テラー)やDeath Before Dishonor(デス・ビフォア・ディショナー)らのバンドによって、多くの人気を獲得していく。この世代のバンドたちになると、ビートダウン・ハードコアの解釈が変わり、スピード感の速いオールドスクール・ハードコアをベースにしたバンドたちがシーンを席巻していく。ロスアンゼルス出身のTerror(テラー)は、ニューヨーク、バッファロー出身のニュースクール・ハードコア・バンドのDESPAIR(デスパイヤ)や、BURIED ALIVE(バリード・アライヴ)で活動していたScott Vogel(スコット・フォーゲル)が新たに結成したバンドだ。2004年に発表された『One with the Underdogs(ワン・ウィズ・ザ・アンダードッグス)』は4万枚の売り上げ、ビートダウン・ハードコアを一躍有名にした。Terror(テラー)のサウンドは、ハードコアの原点回帰。SICK OF IT ALL(シック・オブ・イット・オール)やHatebreed(ヘイトブリード)、MADBALL(マッドボール)などのバンドからの影響をところどころに感じるが、その根幹にあるのは、スピーディーでシンプルなオールドスクール・ハードコア。矢継ぎ早に捲し立てるボーカル、カッコよさを重視した多彩なアレンジのギターのリフ、突如スローダウンするビートダウン・ハードコアのサビのコーラス。気合と情熱と熱意に満ちた清々しいサウンド。この作品をきっかけにビートダウン・ハードコアは、格闘家などに人気が拡散していく。ビートダウン・ハードコアの定義から外れた部分もあるが、ハードコアのカッコいい部分が詰まった作品。

Death Before Dishonor(デス・ビフォア・ディショナー)

デス・ビフォア・ディショナー
出典:facebook
ボストン出身のDeath Before Dishonor(デス・ビフォア・ディショナー)も、Terror(テラー)以降のスピーディーなオールドスクール・ハードコアを展開している。彼らの出世作となった2005年の『Friends Family Forever(フレンズ・ファミリー・フォーエバー)』は、Hatebreed(ヘイトブリード)のような金属質のギターとスピードに、SLAYER(スレイヤー)のようなスラッシュメタルの高速リフやビートダウン・ハードコアのピッチダウンするサビを取り入れながら、彼ららしい個性を確立している。労働者階級の怒りや貧困や戦争について歌い、2009年の『Better Ways To Die(ベター・ウェイツ・トゥー・ダイ)』に収録された曲、“Boys In Blue(ボーイズ・イン・ブルー)”では、ファック・ザ・ポリスと歌い、不当な逮捕や虐待について激しく非難をしている。タフガイ・アティテュードだけでなく、支配者階級に立ち向かっていく、熱いバンドでもあるのだ。

Bury Your Dead(ベリー・ユア・デッド)

ベリー・ユア・デッド
出典:Discogs
同じくボストンのバンドBury Your Dead(ベリー・ユア・デッド)は、ビートダウン・ハードコアというよりも、メタルコアやデスメタルなどが混ざったハイブリットなハードコア。出世作となった2004年の『Cover Your Tracks(カヴァー・ユア・トラックス)』は、低音エッジで重さをきしませるヘヴィなリフ、ブラストビートからスローテンポまで取り入れた変則的なリズムのドラム、ビートダウンのサビ、ハードコアやメタルの気持ちいい部分だけを集め熱くエネルギッシュに洗練されたサウンド。重くヘヴィーなハードコアだが、そこにシリアスさはない。『Cover Your Tracks(カヴァー・ユア・トラックス)』の“Top Gun(トップガン)”や“Mission: Impossible(ミッション・インポッシブル)”、“Eyes Wide Shut(アイズ・ワイド・シャット)”などの、すべての曲のタイトルは、トム・クルーズ主演の映画から名付けられたもので、そこに遊び感覚を感じることができる。危険に挑むアドベンチャー感覚。それがBury Your Dead(ベリー・ユア・デッド)なのだ。