Taqwacoreタクヮコア・シーンについて

10年に発売された映画『タクヮコアズ』のサウンド・トラック。そもそもタクワコアとは、03年に発表された小説、『タクヮコアズ』に感銘を受けたムスリムの若者たちによって、立ち上げられた音楽シーンだ。そのミュージシャンたちを集めたサウンド・トラックがこの作品。このサウンドトラックは映画とは全く別物と考えていい。タクヮコア・シーン全体を網羅したコンピネーションとして、とても価値のある作品なのだ。

収録されているアーティストは、The Kominas(ザ・コミナス)、Noble Drew(ノーブル・ドロウ)、Al-Thawra(アル-タウラ)、The Fanaa Fish、Diacritical(ダイアクリティカル)、SAGG SYNDICATEの6バンド。


出典:TLS

The Kominas(ザ・コミナス)

ボストン在住のパキスタン系アメリカ人によるパンク・バンド。タクヮコア・シーンでは一番有名なバンドで、初期パンクをベースに、スカやレゲェとパンジャブ民族音楽のメロディーを合わせたサウンド。音楽性よりもイスラム教徒であることにスポットを当てられることを嫌い、歌っている内容は、ムスリムであることによる差別や悲哀など、日常的な出来事が多い。

Noble Drew(ノーブル・ドロウ)はOperation Ivy(オぺーレーション・アイヴィー)系のスカ・コアで、憂いやアイロニカルな感情が漂ったサウンドを展開。

The・Fanaa・Fishはマイナー・スレットのようなスピード・コア。

Diacritical(ダイアクリティカル)
怒りと憤りに満ちた扇情的な初期パンクで、<なぜ私を憎む?怒るのを止めろ>と歌う歌詞が印象的。イスラム教徒であることによる虐待や差別について歌っている。

Saggは、初期パンクのような荒さのあるサウンド。


出典:wikipedia

Al-Thawra

アルジェリアの民族音楽にドゥームやクラスト、アナーコ・パンクを融合したサウンド。CRASS(クラス)からの影響が強く、アラブの春やシリア情勢などに言及し、ポリティカル姿勢を示しているバンドでもある。アラブの独特なメロディーに、クラスト系のテンポの遅いハードコアの重さが加わったサウンドは、ミステリアスでシリアスな不気味さがある。タクヮコアではこのバンドが一番好き。

それぞれに個性があるが、どのバンドにも共通しているのは、80年代のアメリカ/イギリスのハードコアをベースにしていること。ニルヴァーナー以降の90年代のアメリカのパンクからの影響はない。やはり彼らにとってのパンクとは、外へ向かって怒りをぶつける、闘争的で攻撃的なものなのだろう。だから内面へ向かっている90年代のパンクからの影響は皆無なのだ。パンクとイスラム音楽との融合。いままであり得なかった個性を確立したバンドもいる。パンクのグローバルな側面を垣間見れるコンピレーションなのだ。