Texas Hardcore テキサス ハードコア・シーンについて

そのほかにも、
The Clash(クラッシュ)に影響を受けたサウンドで無駄をそぎ落とした歌詞で反キリスト教について歌ったThe Offenders(ザ・オフェンダーズ)、<彼が死んでよかった/空頭がちゃんと狙えるように、リー・オズワルドを手助けしてやった>と逆説的な表現でケネディーを語った同性愛者のThe Huns(ザ・フンズ)、ガレージロックで、車の運転や女の子、墓場のことなど、何も主張しないことを歌ったPoison13(ポイズン13)、ゲイ風カントリー・ウエスタンのthe Hickoids(ヒッコイズ)といったバンドたちが、テキサスのシーンにはいた。ハードコアなサウンドではなかったが、オルタナティブの先駆け的な存在のバンドたちと呼ばれ活躍した。

出典:BazillionPoints
 

写真こそ載っていないが、テキサスのシーンで一番重要なバンドが、MDC(ミリオン・デッド・コップ)。最後のページのレビューで紹介されているとおり、反逆的な政治スタンスを持っていた。苛立ちと焦燥感にあふれたスピーディーなサウンドで、アンチKKKを信条とし、人種差別主義者に対して徹底的に歯向かっていた。オースティン出身だが、出所不明な拳銃を使ってマイノリティーたちを警官が撃ち殺す事件が頻発していたヒューストンをあえてホームグランドに、ライヴ活動を展開していた。筋金入りのパンク・スピリットを持ったバンドなのだ。

出典:YOUTUBE
 

この本では取り上げられていない、テキサス州ヒューストン出身の重要なハードコア・バンドを紹介すると、
 
Really Red(リアリーレッド)は、Crass(クラス)の影響が強いサウンドからアナーコパンクなサウンドで、保守層への怒りについて歌い、暴力的な警察に直接挑んだバンドであった。だが後期に進につれ、Wire (ワイヤー)などのポスト・パンクに、サイケデリック・ギターを取り入れ、恐怖体験など、攻撃と被害という裏表の感情と、深い内省を歌うようになった。音楽的で叙情的な深さを持ちアートやポストパンクの要素が強かった。

出典:maximumrocknroll
 

D.R.I(ダーティ・ロットン・イムベスィルズ)は、クロスオーバーの第一人者として知られるバンド。ヒューストン出身だが、拠点をサンフランシスコに移しクロスオーバーを完成させた。パンクとメタルをクロスオーバーさせたバンドは、数多く存在したが、長髪のメタルキッズが、ハードコアのライヴに来だしたのは、このバンドがきかっけ。シーンの懸け橋になった存在なのだ。

出典:KREATOR
 

保守派に対する反逆心や憎悪などをパワーにしていたテキサス・ハードコア・シーンだが、90年代に入るとポスト・パンク的な側面が強くなり、The Jesus Lizard(ジーザス・リザード)などのバンドがオルタナティブ・ロックと呼ばれ、アメリカ全土で高く評価された。だがその反面、ダラスでは保守層のアイコンともいえる存在のPantera(パンテラ)が、メタルシーンを席巻。保守層から生まれた新しいメタルとオルタナティブロックという、2つの新しいシーンへの変革があった。保守層への反逆心を持ち、ハードコアな性急さを持った新しいバンドの出現はなくなり、シーン自体が小さくなっていった。オースティンでは現在でも全世界のハードコア・バンドを集めたフェス“CHAOS IN TEJAS”が開催されており、ハードコア・シーン自体は、細々ながらも続いている。

出典:TheAudioDB
 

あらためてテキサス・ハードコア・シーンの魅力を語るのなら、カウボーイという保守的な土地柄の陰の部分が生んだ超個性。どこの地域よりも反逆心の強いパンク/ハードコア・バンドを生んだ土地。サウンド的にも、アティテュードも、ヴィジュアル的にも、ほかの地域ではありえない独特な個性を持ったシーンなのだ。

TEXAS IS THE REASON:テキサス・パンクの異端者たち

PAT BRASIL